表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
気ままなリッター、ジーナの秘密
1480/6899

1396


 ミューくんは気分が悪そうに、その場にしゃがみ込んでしまった。サキくんとセロベルさんが肩をかし、厨房へ戻る。

「すみません」

 冷たいお茶を飲むと、ミューくんは少しだけ落ち着いたみたいだった。

「あそこまで悪化してるひとは、廟以外ではほとんど見ないので、動揺してしまって。廟に居るひと達は、毎日適切な治療をうけていますから、あそこまで辛そうじゃないし」

「そんなに悪いのか」

「かなり……ほんと云うと、あと半年どころか、放っておいたら十日保ちません」

 セロベルさんがこちらを向く。俺は首をすくめてみせた。

 フィーデレンシルさんが病気だったのは、今考えたら意外でもないかも。体の具合が相当悪ければ、口調もきつくなる。だからって、ハーヴィくんへの仕打ちはゆるされたものじゃないけれど。

 ただ、多分フィーデレンシルさんは、体調が悪い自覚がある。ミューくんが症状を云ったら黙ったから。でも廟には行っていない。医師にも診てもらっていないと思う。

 ミューくんも云っていたが、銀貨数枚が自由にならなかった、ってことだろう。詰まりアフィテルディはくず。


 侍女さんが戻ってきて、ジーナちゃんの要望が通ったと伝えてくれた。チェルノーラ夫人は、ミューくんの治療にジーナちゃんが手をかす、というのに魅力を感じたのだ、きっと。共同作業的な。

 ミューくんは安堵の息を吐く。「ああ、今度ばっかりは、君の母君に感謝しなくちゃな。ありゃあかなり長引く。お金が続かなくて廟を出ていったら、お仕舞だ。まったく、ああなるまで放っておけたのが信じられないよ」

「そこまで……」

「もういつ心臓が停まってもおかしくなかった。手斧草を嚙んでる様子はなかったけど、配偶者が手斧草を嚙んだ後に口をゆすがないだけでも悪影響だ。それに、あの病には酒もよくない。きちんと養生してもらわなきゃ」

 アフィテルディはお酒を吞むみたいだし、フィーデレンシルさんも吞むのかも。手斧草、と云えば、賭場では嚙んでいるひとが多かった。アフィテルディもそのクチだろうか。

 ハーヴィくんが、バルドさんにつれられてやってきた。患者の家族にはきちんと説明をと、ミューくんがハーヴィくんと話したがったのだ。

 虚脱状態のハーヴィくんを椅子に座らせ、ミューくんは慎重に言葉を選んで、フィーデレンシルさんのことを説明する。ハーヴィくんは、ミューくんが話す程に、顔から血の気がひいていった。

「じゃあ」声が酷く震え、掠れている。「ねえさん、しんじゃうの?」

「大丈夫。あの病は放っておいたら拙いけれど、きちんと治療さえすれば治る。治療費も確保できているし、半年くらいかけてじっくり養生すれば」

「本当に? 死なない?」

 ハーヴィくんは目にいっぱい涙をためている。「死なないよね?」

 ミューくんが左掌を見せた。「死なない」

 ハーヴィくんはミューくんの手を掴んで、お願いしますと云った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ