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異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
気ままなリッター、ジーナの秘密
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 リッターくん、少し遅れてジーナちゃんが、フィーデレンシルさんへ歩み寄る。「こちらのかたが、具合が悪いの? ミュー?」

「ああ、凄く悪い。はやく治療しないと死ぬぞ」

 セロベルさんがぎょっとして、じたばたするミューくんを地面へ降ろした。フィーデレンシルさんは目を瞠っている。

「なあに、脅すつもり? そんなの通じないわ」

「どうでもいいからそれ以上喋らないで」

 ミューくんはぴしゃりと云って、フィーデレンシルさんへ駈け寄り、燕息をかける。そして、ちっと舌を打った。

「だめだ、これは一度じゃ治らない。紹介状を書きますから、廟へ行ってください」

「はあ……?」

「ただし、成る丈歩かないでください。走るのは絶対だめです。移動は乗合馬車で。魔法の使用も当分控えて。手斧草も絶対にだめです。それから、仕事は暫く休んだほうがいい。西四十三番区の廟ならここから近いし、昼と晩の食事付きで、銀貨何枚か出せば泊まれます。そこへ行ってください。入山がなきゃ、俺が治療したんだけど」

 ミューくんは慌てた調子で云って、こちらを振り返る。「マオさん、紙と鉛筆貸してもらえますか?」

「あ……うん」

 云われた通り、紙と鉛筆を渡した。ミューくんは会釈して、うけとる。

「ちょっと、ど、どういうこと? あたしは健康よ!」

 フィーデレンシルさんが不安げに喚く。ミューくんがそれを睨んだ。

「亢奮しないで。心臓に負担をかけたらいけません。動きが停まります」

「はあ?」

「ここに異常があります」

 ミューくんは鎖骨の辺りを示す。「階段をちょっと上り下りしただけで息切れするでしょう。走ってもいないのに心臓がどきどきする。なんでもないことが気に触って腹が立つ。いらいらする」

 あてはまることがあったのか、フィーデレンシルさんは言葉に詰まる。


 ミューくんは紙に鉛筆でなにやら書きつけ、こちらへ鉛筆を返す。それから、紙をフィーデレンシルさんへ差し出した。もう一度燕息をかけ、溜め息を吐く。

「どうしてここまで放置したんですか。ディファーズ系でなくとも、廟へ行けば銀貨1枚で診療してもらえます。はやくに治療していたらここまで悪化しなかったのに」

「あ。あたし、病なの? ()()()()()?」

「嘘でこんなことは云いません。あなたは病です。それも、相当悪化してる。放っておいたらあと半年保ちません」

 フィーデレンシルさんは目をぱちぱちさせた。ミューくんは二度、三度、と燕息をかけ、深く息を吐く。「申し訳ないが、あまりに悪化してる。魔法だけでは効果がうすいです。仕事を休んで、廟でじっくり治療してもらってください。これを渡せば的確な治療をうけられます」

「仕事を休むなんてそんなのできない! お金がなかったら、あのひとに嫌われる、やっと結婚できたのに離婚なんていやよ」

「あなたの命がかかってるんですよ」ミューくんは低く、脅しつけるみたいに云った。「命よりも給金をとる旦那さんなら別れたほうが賢明です」

 フィーデレンシルさんははあはあと荒い呼吸をして、それから泣き出した。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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