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「じゃあ、ジーナ、君、射猟士に?」
「ええ」
素っ頓狂な声をあげるミューくんに、ジーナちゃんはそう返す。「御山から通牒があったの。わたしの特殊能力との兼ね合いを考えて、射猟士をすすめるって。特に、ほかの職業になりたい訳ではないし、それでもいいかしらと思って」
「それで、弓を練習しているのか」
俺は四人のテーブルへ着いた。「なんの話?」
「ジーナが職業を決めたんですよ」
ミューくんはにっこりする。リッターくんが、インクで汚れた手を拭った。
「射猟士なら、弓系職業では上から二番目だな」
「ほとんど一番上みたいなものだよ。だって、神弓なんてひと本当に見たことあるか?」
リッターくんとサキくんが頭を振り、ジーナちゃんは、ないわね、と云う。
弓系職業、とは、読んで字の如く、弓での攻撃に長けた職業らしい。こっちには銃がないから、物理の遠距離攻撃は、弓・石・投げ槍くらいだ。そのなかで、職業での補正が一番大きいのが弓。神弓>射猟士>弓手>射手>弓つかい。射手までは、目がよくなる、みたいな職業加護。弓手からは、それに命中補正が追加される。射猟士はくらいところでも目が利く上に、弓に限りどんな情況でも10%の確率で当たる。この、10%、は、結構でかいと思う。
それに、ジーナちゃんには隠密があって、体力は優だ。だから、隠れて離れたところから攻撃する、と云う戦法をとれる。矢が飛んできた方向から位置を推測することは可能だろうが、ジーナちゃんには走りまわるだけの体力があって、しかも隠密のおかげで移動中は捕捉されない。そして、ジーナちゃんはいざとなれば近接戦にも対応可能。だから、相当有利。
リッターくんがお茶をすすった。
「俺も弓をやったほうがいいかもしれない。遠距離攻撃の手段を持っているのは、安心だ」
「あら、あなたには魔法があるでしょう。わたしは魔力が低いの」
「俺も高くはない。その点、均衡がとれているのは、サキだな」
唐突に名前が出て、サキくんは一回しゃっくりした。「え、僕?」
「そうね。サキは体力も魔力も優でしょう?」
「あ……うん。そうだけど、でも、攻撃魔法はそんなに持っていないから」
「俺よかましだ」ミューくんは頬杖をついている。「まったくもって、納得いかないね。君らみたいに優秀なのが最終まで残って、俺が一次で通るなんて。未だに信じられない」
「君は特別だよ」
サキくんがにこっとして、ミューくんの頬をつつく。
「特別に、能力値が低いってことかい?」
「またそんな、憎まれ口を……君がどう特別か、くわしい説明をするには、ここではちょっとはばかられるね」
サキくんがしかつめらしく云うと、ミューくんとジーナちゃんは口許を覆って、くすくす笑った。サキくんもすぐに笑い出す。リッターくんは小首を傾げていた。




