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異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
気ままなリッター、ジーナの秘密
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「ご機嫌よう」

 四月の雨亭へ戻ると、リッターくんが来ていた。今日も、もと・娼妓達が群がっている。リッターくんは、私財をなげうって、見返りも求めずにアーフィネルくんを助けた、というので、大幅に株が上がったのだ。

 もと・娼妓達に、お菓子を食べさせられ髪をあみこまれしているリッターくんに、俺達はくすくす笑いを怺える。俺はリッターくんの近くまで行った。

「ごきげんよう。リッターくん、アーフィネルくん、どうなったの?」

「ああ。正式に俺のいとこになった。アーデル兄上が彼を気にいっていて、商会を持たせたいと云ってきかないので、彼は困っている」

「そう。よかったね」

「そうだな。……マオ」

「うん?」

「約束を覚えているか」

 やくそく?

 ……。

 あ。

 あれか。次、来た時に、腹を立てないでほしいってやつ。慥かに約束した。で……。

「ごめん。破っちゃったね」

 リッターくんがアーフィネルくんを連れてきた時、思わず非難めいたことを口にしてしまった。あれは、腹を立てたように見えたろう。実際のところ、どちらかというと戸惑っていたのだが。

 リッターくんは、頷く。

「では、詫びがほしい」

「おわび? なにしたらいいの?」

 リッターくんはにこりともしない。「入山しても、お前の握り飯を食べたい」

 この子は素晴らしいな。


 学生は、月に何度か御山(おんやま)を降りることができる。ただし、初年度の学生は、新しい環境に慣れないうちに里心がわいたらいけないので、初めのふた月は完全に御山(おんやま)に閉じこめられる。

 ユラちゃんが云っていたけれど、申請さえ出せば、差しいれ自体は可能だ。なので、セロベルさんと相談して、書類を仕上げた。セロベルさんは、流石に何年か補助教員をしていただけあって、御山(おんやま)へなにかしら申請する場合の書式にくわしい。

「後はこっちに受取人の署名があればいいぜ」

「解った。ありがとセロベルさん。リッターくん」

 兵法だかなんだかについて、ジーナちゃんと話しているリッターくんのところへ行った。四人は和やかな雰囲気だ。入山前に、いろんなことが片付いてよかった。

「リッターくん。ここに署名して」

「ああ」

 リッターくんは書類を慥かめ、サインした。俺は書類をうけとる。羊皮紙に、セロベルさんが必要事項を書きこんでくれたのだ。リッターくんのサインで、お握りを届ける為の申請書類として完成したから、後でセロベルさんに提出してもらう。俺は勝手が解らんから、解ってるひとにまかせるのが安全。

 セロベルさんに羊皮紙を渡した。セロベルさんは、お喋りしている四人を眺めながら、羊皮紙を丸める。「いいな」

「え?」

「俺は裾野の人間だから、シアイルのやつだろうと、ロアのやつだろうと、ディファーズのやつだろうと、普通に付き合いしてきたけどよ。あいつらは、故郷と裾野以外は敵だって教えられてきた筈だからな。特にロアなんか……ああ、いや。それなのに、あんなふうに友達付き合いしてるなんて、これからはそうなっていくといいなって、思ってな」

 セロベルさんはそう云って、微笑んだ。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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