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市場はまだ活気があって、楽しい。俺達はフルーツ飴を買って、今まで市場で見たことがない、防具のお店を覗いた。何日か前からここにお店を出しているそう。気付かなかった。
ミューくんとサキくんが鎧や籠手を物色するなか、俺とジーナちゃんは近くの木箱に腰掛けて、フルーツ飴をぱりぱり食べる。飴掛けにするには、ちょっと酸っぱいフルーツがおいしい気がする。
「これ、おいしいね、さるなし」
「ええ。……マオ、ありがとう」
「うん?」
「ミュー、昔だったら、本当にお父さま達を殺していたと思うわ」ジーナちゃんの声は小さい。「彼は嘘を吐かないひとなの」
ジーナちゃんを見る。冗談ではないらしい。俺は言葉を選ぶ。
「えっと……ミューくんが考え直してくれて、よかったね?」
「ええ。でも、それはあなたのおかげよ。あなたに教わったクッキーを焼いて、食べてもらったら、ミュー、とても落ち着いたから」
そっかそっか。お菓子の力って偉大だ。
ミューくんが籠手を試着している。「ああ云うのも、入山の時に必要になるの? 防具」
「さあ……基本的に、実技は統一装備だと聴いたわ。その為に、制服はなんの効果もついていないのだそうよ。御山の許しを得た工房でしかつくれないし、記録は全部とっているんですって。荒れ地ふうだから、似せてつくってもすぐに解ってしまうし……」
へえー。そういや、ブレザーっぽい制服らしいから、荒れ地ふうって扱いなのか。
「でも、授業以外で手合わせしたり、決闘をする場合は、自由だから……持っていくひとも居るのじゃないかしら」
「ミューくんは決闘なんてしなそうだけどねえ」
「そうね。しないでもらいたいわ」
ジーナちゃんはふっと息を吐く。「掠り傷でも負ってほしくないの。彼はいいひとだから」
ミューくんとサキくんは、お揃いの手袋を買った。黒い革製で、指先を落としてあるやつ。
癒し手にしても還元士にしても、杖を持つのが普通だ。その手袋は、杖を持つことを想定してつくられたもの、だそう。
やはり侍女さん達が離れてついてくるなか、俺達は広場へと移動する。ジーナちゃんが残念げに云った。
「今年はルッケンレーネを見られなかったわ」
「来年があるだろ。夏休みになったらおりてきて、見よう」
「あ、そうだ。昨夜、ルッケンレーネの子と知り合ったよ」
俺がそう云うと、サキくんがくすくす笑った。ミューくんが不思議そうにする。「サキ?」
「いや。ごめん。昨夜、マオさんと薬材採集に行ってね。マオさんの云うように、ルッケンレーネの一員だって子と、知り合ったんだ。その子が面白い子だったから、思い出したら、つい」
「なんという子?」
「コマちゃんだよ」
まあ、とジーナちゃんが嬉しそうにした。
「トゥレトゥススに曲芸をさせる子だわ。知り合えたなんて、凄い」
え、助手さんかと思ったら、調教師さんだったんだ。コマちゃんまだ十歳くらいなのに、すっごい。




