表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
気ままなリッター、ジーナの秘密
1451/6877

1368


 リータちゃんが拳でテーブルを殴った。リッターくんは動じた様子なく、リータちゃんを見る。

「不満? 不満だらけよ」

「それは意外だ。我が家はシアイルの侯爵家、アーフィネルは叔父の養子になる予定だから、身の安全は保証される。シアイルに限らず、我が家の縁者に迂闊に手を出すばかは居ない」

「そういう問題じゃない! 兄ちゃん、本気でこんなひとがいいの? レニルヴァさんが身請けしてくれるって……!」

「テレイタ」アーフィネルくんの声もひんやりと、かたかった。「俺は娼妓が長かったから、ロヴィオダーリ家の威光は解ってる。それに、ロヴィオダーリは長年同盟関係にあるレフオーブルと同じく、領地では疎蕩者を正しく神として扱う。俺にとっては凄く安全なんだよ」

 リータちゃんがぐっと詰まった。けれど、涙まじりの声で云う。

「そんなの……裾野に居たら安全でしょ。わたし、兄ちゃんのこと、まもるよ。まもれるよ。レニルヴァさんも居るし」

「小ルモ家にどんな権力があるのか、聴かせてもらいたいものだな」

 リッターくんが嘲るみたいに云う。本当にどうしたんだ? リッターくんらしくない。ミューくんがリッターくんを睨んでいる。「リッター、口を慎めよ。司教家をばかにするのなら俺にも考えがあるぜ」

「……言葉をかえる。レニルヴァ・ルモにどれだけの力が?」

 リッターくんはミューくんへ決して顔を向けない。でも、声には怯えの色があった。

 レニルヴァさんは俯いている。リータちゃんは唇をぶるぶる震わせ、腰を浮かせる。

「祇畏士さまなんだから、偉いし、凄いもん。あなたみたいに突然兄ちゃんをさらったりしないし、兄ちゃんに変なこと吹き込んでつれてったりしようとしない」

「後半は否定できないな。だが、祇畏士とあれど、体はひとつだ。(ぎょう)に出ている間誰がアーフィネルをまもる? 疎蕩者を神と認めぬ地域で、長く娼妓をやっていたアーフィネルが、どれだけの危険にさらされると?」

 リータちゃんは口をぱくぱくさせ、しかしなにも云い返さずに、腰を落とした。アーフィネルくんは目を伏せている。「そういうことだから。でも、年に二回くらいなら、お前には会えるよ、テレイタ」

「……なあにそれ。兄ちゃん。どうしてなの? レニルヴァさんに好かれてるの、兄ちゃん喜んでたでしょ? わたし知ってる」

「好き嫌いだけではどうしようもない」

「あの」


 レニルヴァさんが顔を上げた。

 リッターくんはまっすぐそれを見る。「なにか」

「……慥かに、小ルモ家は権力がありませんし。わたし自身も、大した功を上げていないし、単なる祇畏士で、力はないです。それに、疎蕩者を神と認めていないから、アーフィネルさんが危険な目にあうかもっていうのも、解ります」

「では、納得したのか」

「いいえ。わたし、家を出ます。ううん、国を出ます。あなたがアーフィネルさんを買うのに用立てたお金も、一生かけて返します。だから、アーフィネルさんを諦めてください。わたしはアーフィネルさんが好きなんです」

 レニルヴァさんは震える声で云いきった。

 リッターくんは暫くレニルヴァさんを見詰めて、それからアーフィネルくんへ顔を向ける。

「だ、そうだ。賭けは俺の勝ちだな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ