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異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
気ままなリッター、ジーナの秘密
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ジーナの冒険・6


 ジーナは一旦隠密を解除し、息を整えた。強制解除されるより、自分から解いたほうが、魔力を無駄にしなくていい。どういう訳か、隠形系特殊能力は、強制的に解除されるとその瞬間魔力をごっそり持って行かれる。ついでに、次に発動するまでに、冷却期間をおかないといけない。

 ジーナは深い呼吸を繰り返す。部屋は、甘いカミツレの匂いがした。

 ジーナは成る丈自分の痕跡を残したくなかったから、窓敷居にあしをひっかけて、強引に壁を登った。空気とりの窓に手がかかる。両手をかけて、ぐいっと体を持ち上げ、勢いのまま窓を開けた。そして、片手を外に出し、窓の縁にひっかける。あしをぶらぶらさせたその状態で、五秒、深呼吸した。それから体を持ち上げ、隠密をつかいながら上半身を外へ出した。


 ああ、開拓者よ! どうしてわたしを停めるのですか?

 不穏な音を立てて、ヴェールが裂けた。どこからか飛び出していた釘にひっかかったのだ。だが、裂けたのはせなか側で、ジーナはほっとする。開拓者は、ジーナがこんなこそ泥のような真似をするのを、停めようとしているらしい。ミューに顔(正確には首から上)を見せないことを、ではない。

 ジーナは口のなかで小さく開拓者へ詫び、左手を胸へおしあてた。祈りの言葉をすばやく一回唱え、腕の力で体を外へ出す。くるっと回転して、両手で窓敷居へぶら下がった。ミューはどうしているだろう。怒っているか、呆れているか、もしくはその両方だ。わたしはいつだって彼を失望させる。それで嫌われるのはいやなのに、婚約が解消になればいいとも思っている。

 彼は完璧なひとなのに、どうして許嫁として愛せないの、ジーナ? あなたに文句を云う権利があると思う? 総大司教の娘にあるまじき低い魔力〈もしかして、わたしの魔力の低さが原因で、お父さまは長く総大司教になれなかったのかもしれない!〉、かわいげのない態度、おかしな容貌、常に携行している剣。そして、ミューが居ながら、別のひとへ心を動かした。ミューはわたしに我慢ならないと怒鳴り散らしたっていい。わたしを侮辱したっていい。そうするだけの権利はあるのに。

 どう考えたって、彼は我慢強すぎる。


 ジーナはあしを伸ばし、採光窓の敷居へ飛ぶ、両手で窓庇へ掴まった。千切れかけたヴェールがゆうらゆうらと揺れる。このヴェールはインシャの考えだ。かんしゃくを起こして鏡を放り投げたジーナに、かつて慎み深いご婦人は顔を隠していたのですよ、今も裾野ではそうしているでしょう、と、父の商会から沢山のヴェールを買ってきてくれた。インシャは賢い。きっと両親は、ジーナがミューと()()()()為にヴェールを買ったと誤解してくれただろう。

 ジーナは横へ目を向け、優雅に飛んだ。ドレスがはためく。ジーナは、首尾よくリッターの部屋の窓へ飛び移った。

 左手で窓庇を掴む。開拓者、おまもりください。

 ジーナは身を屈め、分厚いがらすの向こうを見た。外から覗かれることは想定していなかったらしく、ついたても帷もない。

 リッターは居た。気怠げに、ソファへ沈み込んでいる。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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