ジーナの冒険・3
お楽しみ?
めしつかい達がくすくすと笑う。めしつかいのひとり、マオくらいの背格好の少年が椅子を持ってきて、リッターの兄……ヘアツォークが座る。
「ありがとう、アンフォイアーン。君はまったく、愛らしいし気が利く子だね。僕のものになるつもりはないかい?」
「ヘアツォークさま、僕はもうフォルクさまのものです」
少年がにこにこして答えると、ヘアツォークは実に残念そうに、大仰に息を吐く。
「ああ、まったく、弟達は抜け目がない。大体、兄の僕より先に手をつけてまわって、礼を失しているとは思わぬのかしら。罰当たりなフォルクから僕へ鞍替えするというのはどうだい?」
しかめ面のヘアツォークに対し、少年は笑顔を崩さない。
「申し訳ありませんが」
「フォルクはめしつかいから評判がいい」ヘアツォークは不満げに、別のめしつかいからマグをうけとる。「あやつが一体なにをしているのか、聴かせてもらいたいものだね。跪いて心臓を捧げると約束するのか? 君を生涯愛し通すとでも? それとも、なにか器質的な問題かい。僕は耳持ちだが、手荒な真似はしないと約束できる」
「フォルクさまはとても……楽しいかたです」
「ああ! そうだろうとも。君の愛するご主人、可愛い末っ子のフォルク坊やは、毎日君らと騒いでいるものな。君らを疲れさせたらとっかえひっかえして。あれは僕よりも酷いぞ。詰まりリッターやアーデルよりも酷いってことだ。このままフォルクに付き合っていたら君、おかしくなってしまうよ。きちんとした形式と云うものを、まず学ぶのが本当だ。敬意を払い、互いを思い遣って……」
ヘアツォークは少年の手をとって、指を嚙むみたいに口付ける。少年はくすぐったそうに笑った。
「その体がまだ多少は清らかなうちに、僕みたいな誠実な男にのりかえ給え」
「ヘアツォークさま、からかわないでください」
「うん?」ヘアツォークは上目遣いに少年を見て、手をひき、自分の膝へのせた。幼子にするように抱きすくめ、手へ口付ける。「なにを云っているのかな。君はからかわれるのが好きだろう、アンフォイアーン? この可愛い手でフォルクになにをしてあげているか、僕が知らないとでも?」
「ヘアツォークさま……」
「僕にも優しくしておくれ。でないと僕は、君のフォルクを痛めつけることになる。おや、それはいつもやっていることだったな」
少年が自由な手でヘアツォークの耳へ触った。ヘアツォークは満足そうににんまりする。
ジーナはじっと動かずにいた。どうも……思っていたのとは違うようだ。帝国貴族と雖も、若い男は羽目を外し、みっともないことになる、というのは、ジーナだって聴いたことがある。ここの四兄弟は違うと思っていたが、どうも、そういう手合いのようだ。
かすかに嫌悪感がわいたが、一方で、それならもっと筋が通らない、とも感じた。娼妓を隠す意味が解らない。それに、どうやら外部へ求めずとも内部で事足りているようだし。
ジーナは考えながら、めしつかいが廊下側の扉を開けて這入ってこようとするのを見た。めしつかいはヘアツォークに驚いてぺこぺこする。その脇をすり抜けて、廊下へ出た。
感想ありがとうございます。はげみになります。
キャラ名に関しては書いていても混乱する時があるのですが、マオの性格上「俺はマオです、あなたは?」と名前を訊くタイプなので、マオ視点の場面だとどうしても名前の表記になるのは避けられないと考えています。
反対に、キャラコは人見知りで名前の覚えもよくないので、荷車のおじさん、宿のおかみさん、のような表記です。
ルビについては、読みにくい漢字には成る丈振っていきます。参考になりました。ありがとうございます。




