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ああ、と、セロベルさんはお茶を淹れながら頷く。リエナさんは風の魔法でボウルを冷やした。「八月にないのは毎度のことだけど、六月にないのはめずらしいわ。そうでしょ、入山経験者さん」
「まあな。忍耐強いのが揃ってるんだろう」
そういえば、ほんとに募集かからないな、最近。試験が終わってからも何度か募集はかかったのだが、俺は毎回面接をうけることすらできていない。いつも西門さえ見ずに終わっていた。
「セロベルさん、お茶全然足りません」
グエンくんとウイザリオさんがからのティーポットを手に戻ってきた。「後、定食、23追加です」
今日はリータちゃんが居ないので厨房は忙しい。まるごとトマトのハンバーグはリエナさんが肉だねをつくって成型し、ツァリアスさんが焼き上げながらたまねぎソースをつくる。俺はキャベツと揚げきのこのサラダの味付けと、豆のスープ担当。サッディレくんがひたすらキャベツを切って、アーレンセさんはきのことうす切りにんにくを揚げている。デザートは桑の実の砂糖漬け。
サラダは、ふとめの千切りキャベツを、お醤油・お酢・はちみつであえる。お好みのきのこを手で食べやすいサイズに裂いて、片栗粉を軽く塗して高温でからっと揚げる。うす切りのにんにくもかりかりになるまで揚げる。キャベツがしんなりしたら小鉢へ移し、きのことにんにくをのせてできあがり。
盛り付けはミューくんとサキくんだ。リータちゃんが居ない今日に限って、お客さんはひきも切らない。リエナさんが喚いた。
「セロベル、もうひとり料理人を雇いましょ。リータが居ないんじゃ体がふたつあったって足りないわ!」
「落ち着け、リエナ」
「だって大変なんだもの……マオだって、奉公が決まったら居なくなるのよ」
「そうだけどよ」
そういえば、そうだな。……俺って結構役立ってるんだ?
お昼過ぎに、ティーくんが戻ってきた。せっけんのお店は、とっても豪勢でとっても綺麗でとってもお金持ちっぽくて、詰まり大満足、だそう。ティーくんを送ってくれたマイレさんがにっこりして、興奮気味のティーくんの言葉を聴いていた。
従業員も凄く感じがいいそう。経理は予定をかえて、ふたり雇い、安全性を高めた。販売員のひとりは有名な細工工房で働いていた梱包士で、工房がよそのまちへ移動したので失職したばかりだったとか。傭兵に就いては、ストラグさんのおすすめのひとを四人雇うことに決めたそう。うちひとりは警邏隊で、四人とも評判はすこぶるいい。
ティーくんのお店のことを聴いた後、マイレさんがストラグさんからの伝言をくれた。アーフィネルくんの情報は、まだはいっていないらしい。ストラグさんも、セロベルさん達同様、他地域の高位の人間がアーフィネルくんを買ったと思っているらしい。




