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「ほかに、なにか云ってました?」
「うーん。あ、ミューくんとジーナちゃん、結婚が近いんじゃないかって。ハーヴィくんはそんな感じがしたらしいよ」
ミューくんは小首を傾げる。サキくんがアーチを潜ってワゴンを押してきた。「後、20、追加です」
「はい。サキくん、さっき、ジーナちゃんが来てたんだって」
「え?」
汚れた食器をレンウィくんへ渡そうとしていたサキくんは、くいっと体を捻ってこちらを見る。レンウィくんがその手から食器をとって、流しへ沈めた。
「ジーナが? ほんとですか?」
「多分。眉だけ白い女の子なんて、ジーナちゃんくらいしか居ないでしょう?」
「あ……そうですね……彼女、じゃあ」
「俺には挨拶もなしさ」
ミューくんはちょっとおどけて云う。サキくんは意外そうな顔をした。「ミュー?」
「ああ。ジーナ、元気みたいだよ。ハーヴィさんが転びそうになったのを助けて、マオさんの料理を食べてるにしちゃ軽いなんて、彼女らしい口をきいたそうだから」
ミューくんはやわらかく微笑む。ミューくんとジーナちゃんは幼馴染だ。ジーナちゃんの言動で、ある程度状態も把握できるのだろう。ジーナちゃんは思ったより元気、と判断したみたい。
「これで、俺にも会ってくれりゃ文句はないんだけどね。彼女、強情だから、参る」
「……君ほど強情じゃないだろ、ミュー?」
「云ったな」ミューくんはにこっとした。「そんなんじゃ、入山してから君とは付き合いしないぜ、サキ?」
「僕に許しを請わせたいの?だめだな、君にゃかなわないよ」
そう云いながら、サキくんは仰々しいお辞儀をした。
ハーヴィくんは、今朝はいつもより勢いよく食べた。ジーナちゃんのおかげだ。凄くありがたい。
朝食を終えて、迎えに来たマイレさんと馬車へのりこむティーくんを見送る。アーフィネルくんのことが気になるし、俺なりに調べをつけようと、せっけんのお店を見に行くのは遠慮した。どちらにせよ、ストラグさんのやることなら間違いはない。
調べると云っても、伝手はひとつだけだ。ラスターラ卿である。
ラスターラ邸へ行って、アーフィネルくんについてなにか知らないか訊いてみる、と云うと、セロベルさんとミューくんがついてきてくれることになった。ありがたい。
準備を調えて、乗合馬車へのる。暫く無言で揺られて、中央で降りた。そういえば、ルッタさんのお店、三店舗目がこの辺りだ。ルッタさんは、能力値が低いだけで面接もうけられないなんておかしな話で、してもらいたい業務をきちんとこなせるなら雇う、と、いつか怒っていた。うちは麺の店だから、どれだけ凄い魔法をつかえたって仕方ないのに、と。従業員同士で、つかえる魔法の多さでヒエラルキーができてしまっていたらしい。そう云うのって、どこでもあるんだよな。どうしてなんだろ。無駄なのに。




