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 シアーくんが喋り終わって、暫く誰も声を発しなかった。アーフィネルくんは、たまに四月の雨亭へやってきて、手伝ってくれた。給仕が忙しいなら給仕、草があんまりにも茂っていたら草むしり、落ち葉がたまっていたら掃き掃除、と、行き届いていないところを。

 つい何日か前も来てくれて、会話した。なんだったかは覚えていない。他愛のないことだ。それなのに、そのアーフィネルくんが、行き先も告げずに居なくなった。

 レニルヴァさん、ではない。それに、多分ディファーズのひとでもないだろう。他地域の貴族の可能性はうすい気がする。裾野の大きな商会の商会長、が、考えられる……のかな。

 前庭への扉が開いた。全員、さっとそちらを向く。「やあ。お邪魔だったかな」

 マイレさんだ。


 俺と、セロベルさんが立ち上がる。

「マイレさん」

「ストラグさんのお遣いだよ」

 マイレさんは片手に持った紙に目を落とす。「うちで扱っている案件で、アーフィネルという娼妓に店を持たせたいと云うものはありません」

 あ……ストラグさん、そんなこと調べてくれたんだ。

 マイレさんはひらっと紙を振る。

「別の両替商にも問い合わせてみましたが、そういった相談は受けていないそうです。ただし、両替商に籍を置いていない経営相談役も居ない訳ではありませんので、悪しからず……だ、そうです」

 情報漏洩にならないのかな。大丈夫?

 セロベルさんが反応しないので、大丈夫なのかもしれない。俺はマイレさんへ云う。「ありがと……」

「ううん、礼ならストラグさんに。僕はただのつかいはしりだからね」

 マイレさんはそう云って、お辞儀をすると、扉を閉めた。

 再び、全員黙る。一分くらいして、セロベルさんが云った。

「これから両替商へ相談するつもりなのか、在野の経営相談役を頼るつもりなのかも知れねえ。でも、そうでないんなら、他地域の人間だな。地元でそういうもんを用意してやるんだろう。貝貨100枚も顔役に渡せるのに、娼妓に店のひとつも持たせねえなんてことはない」

「そうかしら。外に出すのが心配で、ずっと傍に置いておくつもりかもしれないわ」

 リエナさんの反論に、セロベルさんは頭を振る。「そういう場合こそ、そいつ名義の店は是が非でも用意してやるもんなんだよ。てめえになにかあったら大枚叩いて身請けした大切な娼妓が困窮するだろ。そうならないようにしておくんだ」

 ということは……他地域の高位の人間、もしくは大商会の会長。か。


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