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リッターくん、口下手だもんねえ。ほんとは凄くいい子なのに、勘違いされがちでもどかしい。
リッターくんの頬っぺたをちょいとつつく。
「……入山しても、そう?」
「どうだろう」リッターくんはちょっと目を伏せる。「俺は意志薄弱だ。四人と居て、面倒なことになったら、距離をとるかもしれない」
門を潜った。前の通りはにぎやかだ。
「かも?」
「ああ。そうだな。確実に距離をとるとはいいきれない。……四人と居るのは、楽しい。意外なことに、ユラを含めて五人でも、楽しいな」
そうか。それはよかった。
俺はリッターくんの上腕を軽く叩く。「まあ、御山以外でも会えるんだしさ。そっちでは親しくできなくても、お休みになったら一緒に四月の雨亭に泊まってよ。で、また一緒に薬材採集に行こう。それで、どう?」
「……それはとてもいい考えだ。助かった。よい助言を、ありがとう」
リッターくんはそう云ってあしを停める。俺も停まった。リッターくんは軽く腰を屈め、俺の両頬へちゅっちゅっと口付ける。俺も、リッターくんの左頬へちゅっとやった。両方はしてあげない。
「また来てね」
「できたら。……次、来た時に、腹を立てないと約束してくれるか?」
「うん?」
「無沙汰をするだろうから」
あー、リッターくんも忙しくなるんだ。そっか……淋しいな。今日も、なんか用事があるらしいし、帝国の高位の貴族子女は大変である。ユラちゃんみたいに会食とか、もしかして、お見合いがあるのかも。
お握りの包みをおしつけた。リッターくんはそれを、両手で大切そうに抱える。
「来てくれるんなら文句ないよ。来てくれなかったら恨もうかな。呪っちゃうかも」
おどけて云ってみるが、リッターくんは神妙な顔だ。
「そうか。……入山までに、かならずもう一度は顔を出す。だから、腹を立てないでくれ」
「解った。約束だね」
リッターくんはなんだかとてもほっとしたみたいだった。深く頷いて、もう一度俺の右頬へちゅっとやる。「また会おう」
「うん。いつ来ても、お握り出してあげられるよ」
「それはありがたい」
リッターくんはちょっと笑って、会釈し、大通りの方向へ歩いて行く。俺は暫くそれを見送って、厨房へ戻った。俺って怒りっぽいイメージあるのかな。初対面で説教を一席ぶったから、それでかも。
中庭を片付けて、厨房でお菓子をつくる。リオちゃんを送ったサキくんが戻ってきて、すぐに給仕に立った。リータちゃんが夕食用のスープのお鍋をかきまぜながら、不思議そうに云った。「皆さん、入山が決まっているのに、全然偉ぶらないですね。お手伝いもしてくれて……」
「いい子達なのよ」リエナさんが返す。「もうひとり、ジーナって子が居てね。その子はお菓子もお料理もすっごく上手につくれるのよ。今年も、顔を見せてくれると思ってたんだけど……」
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