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サッディレくんの水芸に、子ども達は大喜びだ。サッディレくんは氾濫士なだけあって、水の魔法でいろんなことができる。子どもに特にうけたのが、お水をぱっと空中に散らし、虹をつくる、というもの。水の魔法が得意になったらこれくらいできるっす、水の魔法はいいっすよー、と、サッディレくんは子ども達を水魔法のみちへ引き摺りこもうとしていた。
「お茶も出せませんで……」
「いえ。今日は、ちょっと、相談に来ました」
「相談?」
魔法をつかえない子もサッディレくんの水魔法を見物に走っていったので、ベンチは空いている。俺とマイファレット兄妹は、ベンチに座って、サッディレくんと子ども達を眺めていた。
顔をちょっとだけふたりへ向ける。「マイファレット嬢、能力値を伺っても?」
「はい。アエッラは、体力も魔力も良ですわ」
「つかえる魔法は……」
「水、熱、土、魔力はそれなりに。風の魔法は苦手です。駆使の魔法はつかえません」
うわー、スペック高えな。入山が決定してるから当たり前っちゃ当たり前なんだけど、確認すると凄まじい。
マイファレット嬢は小首を傾げる。
「特殊能力は、収納空間、速歩、察知、魔力消費軽減ですわ」
特殊能力てんこ盛りじゃん。しかもどれも役立つやつ。ああ、この間もの凄く速く走ってたの、速歩だから?
察知は、俺がやろうと思っていることにはとても役立つ。うん、いけそうだな。
俺はにこっとした。
「マイファレット嬢、もしよかったら、薬材採集の護衛をしてもらえませんか?」
「護衛?」
サローちゃんからプレッシャをかけられているし、薬材採集にはどうせ行く。時間停止(仮)の収納空間をつかって、普通なら運搬できないようなものをとって帰る予定だ。となれば、当然かいとり額は大きくなる筈。
勿論、不安だからほかにも傭兵を雇うけれど、マイファレット嬢にも護衛をしてもらって、護衛料を払う。幼稚園に直に寄付するよりも、マイファレット兄妹も納得してうけとるだろう。それを、運営費に充ててもらえばいい。
昨夜思い付いて、サローちゃんの薬草図鑑を調べてみたが、劣化がはやくてまちへ運べない薬材は沢山あった。嫋々蔓という植物の種が、今の時期この辺でとれるなかで一番高いみたい。目覚めの滝近くで、楠みたいな香りの強い木にまといつき、春先に花を咲かせる、つる性多年草だ。葉っぱの裏にできる種には、羽毛みたいな白いふわふわがついていて、運んでいる間にそれが剥がれてしまうと、種の表皮が割れ、薬材としての価値はがくっと落ちる。種からふわふわが剥がれるのは、とって数時間くらい。俺の収納空間へいれておけば、それを防げるだろう。
掻い摘まんで説明すると、マイファレット兄妹は目をまるくした。
「慥かに、お母さまの稼ぎだけでは、少し苦しいのですが……わたくし、傭兵ではありませんし」
「俺も傭兵じゃないですけど、薬材採集には行きますよ。薬材の代金を山分けってことで、好いんじゃないですか」
「はあ……」




