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夜、ベッドへはいって、ふいと思い付いて所持金を確認してみる。
何や彼やで、賭場で結構稼いでいたし、余裕はある。本を買って、幼稚園に寄付しようかな。それに……。
「あ」
思い付いた。
翌日。十一月も半分が過ぎて、風の冷たさが増してきた。こういう時はあったかいスープが嬉しいよね。
かつお昆布だしの、お豆腐の味噌汁は、裾野のひとにもすんなりうけいれられた。おいしいものはおいしい。あとは、とり肉と大根の甘辛煮に、小松菜のおひたし、エディブルフラワーのチーズソースサラダ、柑橘系のジャムを塗ったクッキー。マーマレードっぽいんだけど、ちょっと味が違う。レモンなのかな?
うー、不知火食べたい。あれおいしいんだよね。ネーブルも好き。河内晩柑もおいしい。はっさくも。皮の内側の白いとこが好き。甘苦くておいしい。
朝ご飯が終わって、許可をとってでかけた。今日はサッディレくんがついてくる。俺ってそんなに危なっかしい?
向かった先は、マイファレット幼稚園(勝手に命名)だ。今日は前庭で、みんな元気に魔法の練習をしていた。ほんのちょっと火花が散ったり、そよ風が起こるくらいで、マイファレット嬢もヴェーティヨンさんも、子どもをもの凄く誉めている。誉めて育てる方針みたい。気が合う。
マイファレット嬢が継ぎのあたったドレスで子どもに魔法を教えている、と云う情況を、サッディレくんはいまいちのみこめないらしく、戸惑っているのがありありと感じられた。俺は片手をあげ、軽く振る。「おはよーございまーす」
「マオさん。ご機嫌よう」
マイファレット嬢がお辞儀する。俺はそちらへ近付いていった。子どもは昨日より増えている。ベンチがふたつあらわれていて、子どもがふたり、そこに座っていた。
「ご近所のかたがつくってくださいましたの」マイファレット嬢はベンチを示してから、長い髪を耳にかける。「あの子達は、魔法をつかえないので、見学ですわ。退屈なら本を読んだり、おえかきをしてもいいのです。ただ、わたくしの目の届く範囲で、と、約束していますわ」
「楽しそうっすね」
サッディレくんがとりあえず、いろんな疑問をのみこんだ。マイファレット嬢はサッディレくんをみて、肩をすくめる。「あら……いつぞやは、失礼を……」
「ああ、いいっす。こっちも仕事なんで。おっ、お菓子落として泣いてたちびじゃんか!」
サッディレくんがバルくんに気付き、走って行った。バルくんを抱え上げる。バルくんはけたけた笑った。子ども達がサッディレくんの脚にまとわりつく。
「魔法の練習?」
「うん!!」
「俺、水の魔法得意っすよ。見せてやろっか?」
見せてー!と、子ども達が一斉に叫んだ。




