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「おはようございます」
お料理していると、ツィークくんが中庭側の出入り口からひょこっと顔を覗かせた。俺は回鍋肉をお皿へ盛り付けた。アーレンセさんがお皿をひきとって、トレイにのせていく。
「おはよ、ツィークくん。ご飯食べてく?」
「食べます。今日は、カンザル家からのおわびを持ってきました」
ん?
俺も一応被害者なのか。私兵をぼっこぼこにしたのはファルさんとエヴィさんだけど……あ、そういえば俺も突き飛ばされたりしたっけ。
ツィークくんは、傭兵協会へのご飯の配達もかねている。詰まり、まだまだ傭兵協会に泊まり込み中のライティエさん達用。事務仕事が一段落しても、人攫いの関係者を順次荒れ地へ送ると云う作業が待っている。祇畏士の多くはディファーズに居るから、ディファーズへ協力要請しないといけないらしい。
お鍋に油をしいて、にんにくと生姜のみじん切りを香りが出るまで炒める。香りがたったら、一口大に切ったキャベツ・短冊に切った人参などを加えて炒め、色が鮮やかになったら一旦ボウルへ。空いたお鍋で豚肉を炒める。焼き肉用のお肉くらいの厚みで、掌の半分くらいの大きさ。
お肉に粗方火が通ったら、麦味噌・豆板醤・お醤油・白味噌を合わせた調味液を加え、お野菜を戻して絡める。豆板醤は極く少なめ。お肉に完全に火が通ったらできあがり。好みで目玉焼きのっけてもいい。
時季だったらピーマンを絶対いれる。ていうかもうピーマンだけでもいい。ピーマン食べたいなあ。
「カンザル家、どうなったの?」
「恋愛感情のもつれ、ということで、閉門までには至らないそうですー。ただ、領地替えをされるみたいですねぇ。首謀者のカンザル嬢はディファーズへ送還されて、廟で修行にはいるとか-。カンザル卿は、大司教では居られないでしょうねえー」
「そっか。マイファレット」
「ああもう、気にすると思ってましたよお。カンザル家から賠償金をもらいましたよ。かなりの額です」
ツィークくんはにやっとした。「マオさんの云う程、善良じゃないですよぉ、あのお嬢さんは。額が少ないと一度つっぱねてますからねえ」
ほう。
別に、お金をもらいたがるのは、悪いとは思わないけれど。マイファレット嬢にしてみたら、ただひとり残ったお兄さんと、仲好くなった男の子がさらわれたのだ。大パニックになってた訳だし、些少な額では頷かないのは解る。俺だって、妹がさらわれたら、怪我がなくてもお金で解決はできない。この世界だとお金で解決するのが一般的だから、みんな納得するみたいだけど。
ご飯を食べ終わったツィークくんが、お弁当を持って帰っていく。カンザル家から俺へのおわびは、貝貨3枚だった。




