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封印のことが頭を離れず、よく眠れなかった。
翌朝、収納空間も馬車もいっぱいにして、ダストくんとハーバラムさんが四月の雨亭を出発した。見送りに、俺も東門まで行く。
今回は行きの護衛しか頼んでいなかったそうで、帰りの護衛は前日に傭兵協会で雇ってきたという、ヴァッセさんとランティーズさん。いつか、旧トーリュス邸から四月の雨亭へ送ってくれたうちのふたりだ。
ヴァッセさんはやっぱりやつれて見えた。ので、大丈夫ですかと訊けば、恢復魔法のつかいすぎだとか。ヴァッセさんは癒しの力があって、それまで癒し手がやっていた治療が、幾らかまわってきたのだ。還元過多とラッツァクのことが重なって、ほんとに人手が足りていなかったらしい。書類が粗方片付いたのでほんとに助かりました、と云っていた。
東門の辺りには、馬車が沢山あった。検査待ちだ。いかにも商人らしい風体のひと達が、あちこちでかたまって、笑顔で話している。情報のやりとりとか、初対面のひととなのりあったりとか。
馬車をひいているのは五割がラシェジルで、四割がトゥレトゥスス、残りの一割がトゥアフェーノだ。トゥアフェーノは、ロートルという感じ。反対に、ラシェジルは鼻息の荒い若手ばかり。
ハーバラムさんが知り合いの商人さんを見付け、話し始めた。ダストくんが俺の隣で、軽く屈む。「マオ、髪伸ばせよ」
「えー。めんどくさいよ」
「危ない目にあうのとどっちがいい?」
「……短い髪にする権利はある筈」
「はは、マオらしいや。じゃあ、耳飾りは?」
「いたいのやだ」
ダストくんは朗らかに笑った。頭をぽんぽんされる。「強情張るのもいいけどさ、祇畏士さまだっていつも来ちゃくんないだろ。恋人が安全なほうがよろこ」
思わずダストくんの脇腹を殴ってしまった。大笑いされて終わりだ。体力!!
検査が終わり、ダストくんとハーバラムさんが馬車へのりこむ。ヴァッセさんとランティーズさんは御者台だ。
ダストくんが扉を開け、身をのりだした。「じゃあな、マオ。また来る」
「うん、絶対泊まりに来てね」
ダストくんがにやっとする。馬車が動き出した。俺は手を振る。
「またね!」
「おう!セリィさんに、子どもができた時はちゃんと手紙寄越せって云っといてくれ!」
ダストくんはいたずらっぽく笑ってひっこみ、扉を閉めた。次はいつ来てくれるかな。
買いぐいと、おやつと、軽食を済ませ、四月の雨亭へ戻る。セロベルさんは、ダストくんと交換した耳飾りをつけて、にこにこで中庭掃除をしていた。丁度、生ごみのばけつを持ったリエナさんが出てきた。ダストくんの言葉を伝えると、ふたりとも真っ赤になってしまう。???




