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なんとなくもやもやした気分が続いた。
お昼は、この間好評だったので、お握りだ。リータちゃんも、一度見ただけで真似することはできなかった。でも、リエナさんが、ぎこちなくだがつくれるようになったので、ふたりでお握りを仕上げていった。
今日は、塩握りふたつと、とんからのセット。豚のから揚げだ。
豚のブロックを、一口大に切り分け、フォークでぶすぶす刺して何ヶ所か穴を開け、たれへつける。たれは、にんにく・生姜のすりおろし、お醤油。長くつけるとかたくなるので、軽くつけたらとりだし、片栗粉をまぶしてからっと揚げる。ラードでね。にんにくも生姜も焦げやすいので注意。はじめは低めの温度であげて、一旦バットへとりだし、高温で二度揚げすると、なかまで火が通って安心だしかりっとおいしい。揚げてくれたのはツァリアスさんだ。手際がとてもよかった。
へぎに、塩握りととんからを包む。うん、おいしそ。
午前の商談を終え、お昼を食べに戻ってきいていたダストくん達に、包みを渡した。「はい、おやつに食べてください」
「いいのかい?」
「ふたりは特別なので」
にこっとする。ダストくんもハーバラムさんも、にこっとした。ふたりとも、俺を助けてくれた、恩人だからね。
「商談は今日までですか?」
「うん。明日の朝に、レントを発つよ」
「土産物もちゃんと買ったし。セムが、柄のはいったローブがほしいってずーっとぐずぐず云っててさ」
「また来てくれますよね」
「勿論。レントに来る時はかならずここに泊まるよ」
「セリィさんに約束しちゃったんだ」
ダストくんはちょっと首をすくめる。「破ったら殺されちゃうよ」
ダストくん達が出て行った後、大工さんがやってきた。食堂のテーブルで、セロベルさん夫婦と話し込んでいる。宿泊棟の横、中庭に面して、従業員用の棟をつくるかもしれないらしい。その場所がだめだったら裏庭も候補だそう。でも、費用があんまりかかるようなら、来年に持ち越し。
厨房で、俺達従業員は、お喋りしながらクッキーを焼いていた。サッディレくん達は備品の買い出しだ。
お菓子の包みを詰め込んだかごを、カウンタ奥の棚へいれていると、アーフィネルくんがやってきた。一緒にかごを並べていたリューさんが片手をあげる。「よう」
「なんだか違和感があるなあ」
アーフィネルくんはくすっとして、手にした布包みを示す。「リータ、呼んでもらえるかな」
リータちゃんは、兄の訪問を知るととんできた。布包みの中身は、リータちゃんの服。住み込みだからきがえを持ってはいたけれど、足りなくなるだろうと見越して、家にあるものを包んで持ってきたらしい。




