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 カンザル卿、は、大柄で、がっしりしていて、慥かに顔がてかてかしていた。短めの杖を持って、前には大きな盾を両手で持った私兵、隣には剣をかまえた私兵、背後にも得物をかまえた私兵が数人居る。

「これはどうも、ラスターラ家のろくでなし、穀潰しのファルマディエッシャ。お前をここで殺しても、ラスターラ卿は困らんだろう」

「マーゴは優秀だから困らないさ。でもあいつは優しいし、僕のことを愛してるからな。僕が殺されたら咎人を地の果てまでだって追いかける」

「役立たずのお前に裂く労力はあるまい」

「役立たずだって?僕だって火の番くらいはできるんだぞ、なあ、エヴィ?」

「ファルさまはなんにもできなくたっていいんですよ。居るだけでいいんだから」

 エヴィさんは顔を引き攣らせている。「ファルさまを卑しめたな。ぶつ切りにしてだしをとってやる」

 もの凄い脅しをかけて、エヴィさんが飛び出した。大盾をむんずと掴んで、持っている私兵ごと壁へ叩きつける。壁に穴が開いた。ファルさんが云う。

「悪いな、カンザル卿、僕の愛しいエヴィは少々……怒りっぽいんだ。おおいエヴィ、そこまで怒らなくってもいいじゃないか」

「ファルさまを悪く云っていいのはラスターラ卿だけです」

 エヴィさんはにべもない。私兵が斬りかかったが、軽ーく避けて、剣を蹴る。と、分厚い剣がぽっきり折れた。持っていた私兵は啞然とする。カンザル卿もだ。

 ファルさんが折れた剣を蹴って退けた。私兵達が前に出てきて、カンザル卿を背後へ庇う。

「お前も充分悪く云っているだろう」

「そうでしたっけ?」

「とぼけるな。お仕置きしてやるぞ」

 できないくせに、と、エヴィさんはにっこりして、私兵へつっこんでいった。


「エヴィは料理人だけど、僕の護衛でもあるんだ」

 私兵を三人、鼻を殴ってトマトを握り潰したみたいな顔にし、なおも両手をぶんぶん振りまわすエヴィさんを見て、ファルさんが云った。「僕だって戦えるのだけれど、兄さんが心配する」

「当然ですわ」マイファレット嬢がバルくんを抱え直す。「ファルマディエッシャさまになんぞあったら、ラスターラ卿に申し訳がたちません。どうぞ、無理をなさらないでくださいまし」

「うむ、そうは云っても、これは僕がはじめたことだから」

 ファルさんはちらっと俺を見て、ヴェーティヨンさんの腕を肩から外す。頼む、と云われたので、ヴェーティヨンさんに肩をかした。ヴェーティヨンさんは浅い息だ。

「どうも……めいわくを」

「いえ。きっとすぐ、癒し手に治してもらえますよ」

 ファルさんが剣を抜く。「エヴィ、それ以上やったら手が大変なことになる。後は僕がやるから、お前は料理の為に手を大切にしろ」


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