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大家族体験承ります!  作者: 茅野ちよ
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2/7

大家族と男の子 ①

 わたしは今、下町の大きな家の前に立っている。


「悠人、ここが二日間お世話になるお家だよ」

「……」


 わたしは俯いたまま黙る息子にため息を吐く。

 わたしは今日から二日間、実家で行われる父の法事に向かわなければならなかった。うちは母子家庭で、父方の実家に預けることもできない。


 連れて行けばいいだろうと思うかもしれないが、本人が嫌だと言って聞かなかったのだ。さいわい、今は夏休みだ。悠人の我儘も聞いてあげられる。


「悠人、自分が嫌だって言ったんだよ? ちゃんと大人しくお家の人の言うことを聞いてね」


 ホームステイ先の人と仲良くできるかは不安だが、兄弟が多いらしいし、寂しい思いはしないでいられるだろう。


 わたしは意を決して玄関チャイムを鳴らした。

 しばらくして、「はーい!」という元気な声が聞こえた。扉が開くと四十代くらいの女性が出てきた。


「あぁ、もしかして今日から体験予定の悠人くんですか?」

「あ、はい。悠人の母です。二日間お願いします」


 女性はわたしに向かって会釈した後、悠人に話しかけた。


 ……体験予定……? そんなふうに言うんだ。


「悠人くん、この家ではわたしのことはお母さんって呼んでくれたら嬉しいな」


 悠人はこくりと頷いていた。

 わたしは内心ホッとする。悪い人ではなさそうだし、愛想もいい。正直見ず知らずの他人の家に悠人を泊まらせるなんて嫌だったが、この人なら任せても大丈夫そうだ。どこか、そう感じさせるオーラがあった。


「ではお願いします。もう新幹線来ちゃうので」

「はい。ではまた」


 チラリと悠人の顔を見ると、いつも通りの表情だった。元から人見知りはしない子だったから、それは心配していなかった。


 わたしは大きな家に背中を向けて歩き出す。後ろから、「悠太くんは何歳かな?」「十歳、です」と言う会話が聞こえる。


 わたしはこれなら大丈夫そうだと判断して、タクシーを呼んだ。


◇◆◇◆


「はーい、みんな! 今日と明日の家族になる、山田悠人くんでーす! 今回はお母さんの用事があって、ここに来てくれましたー!」


 由紀子さんーーお母さんが僕の自己紹介をした。

 目の前には五人の男女が並んで座っている。


「よろしくお願いします」

「よろしく〜! あ、わたしたちに敬語はいらないよ」


 前に座っている女の人が言った。高校生だろうか、一番年長に見えた。よく見ると、全員お母さん(由紀子さん)に似ている。




ーー普段は別に我儘も言わない悠人が、頑なにお母さんについて行かなかったのには理由があった。

大家族の家にやってきたのは一人の男の子。

稀に子供だけでお泊まりしていく人もいます。

読者の皆様にも、この家族について、少しずつでもわかっていただけたら嬉しいです。

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