表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪眼の力でS級ハンターに  作者: 他力本願
第一章:邪眼を継ぐ者
18/31

18話「接点」

──月曜日。

学校へ向かう道は、いつもと変わらないはずだった。


でも──


(……なんか、そわそわする)


制服を着て、靴を履いて、電車に揺られて、学校に向かう。

たった二日前までは、それが“すべて”だった。


だけど今は違う。


ダンジョン、邪神、スキルの進化、討伐……

あの二日間で、僕は確実に“別の世界”を知ってしまった。


(普通の高校生活に、ちゃんと戻れるのかな)


少し不安を抱えながら、教室のドアを開けると──

中はすでにざわついていた。


「マジで山田大地、まだ帰ってきてないってよ」

「ハンター協会も動いてるらしいじゃん」

「でもさ、大地ってB級だよ? あいつが消えるって、やばくない?」


山田 大地──あのダンジョンに僕を連れていった張本人。


僕は思わず足を止めた。


(……そうか。あれって、まだ……“3日前”のことなんだ)


記憶が濃すぎて、もっと昔のことのように感じていた。

でも、現実ではまだ──何も終わっていない。


そのとき、教室のドアがガラリと開いた。


「席についてー、ホームルーム始めるぞー」


担任の無精ひげがいつもよりピンと張って見えたのは、気のせいじゃない。

先生は黒板の前に立ち、少しだけ緊張した声で続けた。


「ホームルームを始める前に、今日は“諸事情”で、特別にとある方が来てくれてる」


ざわっ──と教室が再び騒がしくなる。


「えっ誰?」

「え?有名人?誰??」


その瞬間、

廊下から差し込む柔らかな足音。


そして──扉の向こうから、涼やかな声が響いた。


「こんにちは。皆さん、お邪魔しますね」


教室の扉が、静かに開かれた。


入ってきたのは、長身で、絹のように滑らかな艶のある黒髪の人物。

透き通るような白い肌と、男性とは思えないほど繊細な顔立ち──

けれど、その瞳には、まるで“全てを見通している”ような静謐な光が宿っていた。


連水 琥珀──水蓮ギルドのギルドマスター。


教室は一瞬で騒然となる。


「うそっ……!?」

「ほんとに……本人……!? え、えぐ……」

「かっこよすぎて無理……!」

「写真撮ってもいいの!?やばいんだけど!」


歓声とざわめきの中でも、

琥珀は一切乱されることなく、静かに微笑んだ。


その姿はまるで舞台上の俳優のようで、

どこかこの“現実”とは違う空気を纏っていた。


そして、ふと──彼の視線が、こちらに向けられる。


僕だ。


(……っ)


琥珀はゆっくりと視線を合わせて──

──にこり、と穏やかに笑った。


心臓が一瞬、大きく脈打つ。


しかし──


「きゃあああああっ!!今、私の方見て微笑んだっ!!」

「違う!こっちだったってば!絶対私に向けてだった!」

「うわ、もう無理、今日死んでもいいかもしれない……!」


女子たちの黄色い声が一斉に響き渡り、

場が浮ついた空気に包まれる。


その騒がしさに紛れるようにして、

僕はそっと目線を外した。


(……違う。今のは──僕に向けてだった)


その確信が、なぜか心をざわつかせる。


琥珀の存在は、美しく、穏やかで、微笑ましいほど優雅だった。


「──皆さん、改めてこんにちは」


連水 琥珀の声は、まるで心に直接触れるような柔らかさだった。

けれど不思議と、教室のざわめきはすうっと鎮まっていく。


「突然お邪魔してしまってすみません。

 本日は、ある調査の一環として、協力してくれる方を探してここに伺いました」


その言い回しひとつとっても、琥珀の話し方はどこか優雅で、言葉に“余白”がある。

はっきりとは言わない、でも確実に“意味がある”──そんな喋り方だった。


「実は……三日前に、あるB級ハンターのパーティが消息を絶ちました。

 ダンジョン関連の事故か、それとも何らかの事件か──現在、私たち水蓮ギルドでも調査を進めているところです」


教室にざわっと緊張が走る。


「──え、それって……山田くんたち……?」

「まじ?ガチのやつ……?」


琥珀は微笑みを絶やさぬまま、話を続けた。


「そのハンターのリーダーがここの生徒さんだったので、この学園の生徒さんの中に、そのパーティと何らかの接点があった可能性がある人物を探しています。

 だからといって、皆さんを疑っているわけではありませんよ。ただ──もし、何か“思い出したこと”があれば、それを教えていただけるだけで構わないです」


詩遠は、自分だけが“突き刺されている”ような錯覚に陥っていた。


琥珀の言葉は決して鋭くはない。

やさしくて、包み込むようで、どこまでも丁寧で。


──だけどその眼差しだけは、一切ブレないまま。


(……見ている。完全に、僕を──)


「協力してくれた方には、個人的にお礼も用意しています。ですから、もし……“何か心当たりがある”人がいたら、後でこっそり先生を通してでも大丈夫です。ね?」


琥珀はにこっと笑い、まるで花が開くような動作で黒板の前から一歩下がった。


「では、お邪魔しました。皆さん、今日もいい一日を」


その姿は完璧な訪問者だった。

品があって、礼儀正しくて、柔らかくて、どこまでも紳士的だった。


──でも、詩遠にはわかっていた。


この人は、こちらの答えを“待っている”。

それも、ただの情報提供ではなく──“僕の言葉”を。


(……僕のこと、もしかして気づいてる…?)

(いや、揺さぶられてるだけかもしれない。ここは慎重に)

心臓がまた、どくんと跳ねた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ