初めてのお仕事は巡回でした ③
「私の名前はダントと申します。お見かけしたことがないのでもしかすると噂の新人さんですか?」
「あっ、あぁ………そ、そうです」
「やはり! 領主様が大変喜んでいて素晴らしい人材が来てくれたと褒めちぎっておられましたよ。何でも称号持ちだとか」
「あぁ、ハハッ」
から笑いしか出来ないや。辺境伯様が褒めてくれてるの初耳で嬉しいけどどんな称号かは答えられない。まさか、嫌われ者っていう変な称号なんて言える筈がないんだもん
「どんな称号なのですか?」
「えっと………団長に秘密にしろと言われてて教えられないんです」
これは本当のことで団長と副団長、シュゲルツさんと他数人しか私の称号は知らされていない
これは名前から誤解されやすく下手な情報を与えない方がいいと方針が決まったから
辺境伯様も勿論、私の称号は知っていて隠すように言ったのは辺境伯様が発端みたい。下手な誤解を生み混乱を避けるためだってことみたいなのよね
「そうでしたか。辺境伯様も教えて下さらなかったのですがよほど貴重で凄まじい力を秘めた称号なのでしょう。メディアバーニヤ領もさらに平穏に過ごせますな」
「ハハッ、ソンナコトナイデスヨ」
もっと立派な名前だったら堂々と言えるのに! 本当に神様なんて大嫌い。もっと立派な称号を私にくれてもよかったじゃんか
そんなダントさんと雑談をしながら村を巡り東側の調査は一ヶ月で終了した。ダントさんはこれからメディアバーニヤの都市に戻り村から仕入れた商品を売り捌くらしい。それが終わると南側、西側、北側と順番に回るとのこと。北側には王都まで行き大きな取引をして帰ってくる頃に一年が終わる。そんなダントさんと同じような行動をしてる商人も何人かいるようで、そんな商人さんたちに生活が支えられてるかと思うと頭が上がらないよ
「クロエさん、またお会いしましょう!」
「はい、また!」
都市の途中でダントさんと別れて私は西側へと移動する。東側には六つの村があったけど何処も異常無しで問題を見付ける方が難しかったぐらい平和だった。西側も問題ないぐらい平和だといいけどな
「うん? 誰かが戦ってる」
目を凝らしてよく見ると数匹の大型の闇の魔物と二人の男性が戦っているように見える。これは参戦して助けないと不味いかも
「大型の闇の魔物を発見、今から戦闘を行います! 場所は西側のふくろうの森の近くです!」
陰口のスキルを発動させ戦闘を開始することを告げる。団長が聞いてくれたなら参戦して欲しい。それだけ大型の闇の魔物は危険で私一人じゃ勝てない相手だからだ
「援護します!」
戦ってる二人を見ると彼らもまた騎士団の方のようで同じ騎士団のマークのマントを羽織っていた。こちらを見ると目で返事をしたように見えた。話してる余裕もないってことだよね!
【フィジカルブースト】
防御を底上げさせ戦いを安定へと持っていく。だけどそこで信じられない光景を見ることになった。一人の男性が急に増えたのだ
【分身】
これは二人で戦ってるんじゃなくて最初から一人だったんだ。二人になったのはこの人の力でこの人も称号持ち。まさか称号持ちの人が団長や副団長、シュゲルツさん以外にもいたなんて聞いてないよ!
【ダブル】
おかしいと思ってた。二人の武器は同じ武器でハルバートだったから変わってるなと思ったんだよね。そんなハルバートの攻撃を当てると傷が一撃で二回もついている。一度の攻撃で二度の攻撃なるとか凄すぎてヤバすぎる
【シールド】
危なくなれば私のサポートを生かして守る! 私は攻撃魔法より回復やサポートの方が得意だから自信はある。あったんだけど一撃でシールドの魔法を破壊されると泣きそうになるんだけど
「ふん!」
【インパクト】
私が邪魔だと判断したのか攻撃対象を私に変えてきたら巨体を吹き飛ばして間合いを作った。あんな大きな巨体を吹き飛ばすとかどんな力してるの? これがこの人の称号の力ってこと?
「ほぉ、これはなかなかでかい魔物だな」
「団長!」
「ゴートンランガ! 助けはいるか?」
「いらん!」
この人の名前はゴートンランガって言うんだ。今まで会わなかったのは偶然なのかな? それとも何処かへと行っていたのかもしれない。そんなゴートンランガさんと私の戦いは時間はかかったものの見事に勝利を収めた。私はサポートに徹しただけだけど貢献出来た自信があるもんね
「娘っ子、助かったぞ! わし一人では時間がかかっていた」
「い、いえ、サポートしか出来なくてすいません」
改めて見ると凄く背が高くて体がゴツイ。しかも顔もめちゃんこ怖そうだし傷だらけなのが余計に怖さを倍にしてる。この人には関わらないようにそっと逃げよう
「ほれ! 受けとれ」
「ヒッ、って………へっ?」
手を伸ばしてきたから殴られるかと思ったら飴玉を放り投げてくれた。相変わらず怖そうな顔で私を睨んでるんだけど怒ってないよね?
「お前はもう少し笑え! クロエが怯えてるだろう」
「む、無理だ! こ、こんな可愛い生物の前に笑顔など作れん!」
「………」
「こいつな? 子供が大好きなんだが顔が怖いから逃げられてるんだ。無愛想なだけで根はいい奴だから仲良くしてやってくれ」
「クスッ、そうなんですね」
思わず笑ってしまった。ジィーと見詰めると恥ずかしそうに目を逸らしてる。これはちょっと可愛いかも。意地悪したくなっちゃうな
「ゴートンランガさん、新人のクロエです! 仲良くして下さいね!」
「ヒィィ!!」
手を握ると顔が一気に茹で蛸のように真っ赤になって煙を出して倒れてしまった。ここまで赤くなって倒れるとかある? これって逆にヤバくない?
「お前、結構エグいことするな?」
「エヘッ、可愛くてつい」
ゴートンランガさんが目を覚ますまで団長がいるらしく私は調査を続けることになったのだった。ゴートンランガさんごめんなさい
いいねや高評価してくれると嬉しいです。ブックマークが増えると作者は小躍りします。誤字、脱字の報告何時でも受け付けてます




