新しい力
聖都に着いてからはや一週間も経過した。本当に慌ただしい日々だった
初日からいきなり王様との謁見が叶い夜遅くまで私たちは警備のためにアイシャ様から離れられずずっと立ちっぱだった。そこから地獄の序章が始まったのだった
ハッキリ言って何もすることがなかった。いや、正確には仕事をしてるんだけどめちゃんこ暇で辛いの言葉しかない。何故なら、立ってる以外なにもしてないからだ
基本的にアイシャ様の護衛なのであちこちに移動して付き歩くのかと思っていたらそこまでの大きな移動はしない。むしろ向こうがやって来て挨拶してくるのだ
一日平均二十人前後ぐらいだと思う。アイシャ様は終始笑顔で対応しスティアーシュゲル聖王国の貴族たちの対応を躱していく。それはまさに東洋にいると言う和の国の忍のように華麗にスルーしていく
後ろで立って聞いていた私は最初は凄いなと感動していたものの段々と辛さがじわりじわりとやって来た
本当に立ってるだけで何もする必要性が出てこない。いや、時間管理はルミナス………全てのスケジュールと時間管理をルミナスがやるものだから、私とオランは………いや、オランを一緒にしちゃ駄目か、あいつはあいつで話の内容を纏めてアイシャ様に全部渡してるから。しかも、字がきれいで読みやすいうえに要点をしっかり纏めてる。いや、学校を卒業したんだから地頭はいいのはわかってたけど………なんか複雑だった
ルミナスがスケジュールや朝の準備を手伝うのはわかる。それ以外の手配は全てオランがやってるのがビックリだった。どうやらメディアバーニヤにいた時にやらされていて覚えたようで身の回りの世話も完璧………あいつが淹れる紅茶がめちゃんこ美味しかったのは正直悔しかったけど、あの紅茶なしでは生きていけないのでお願いしてる。変なところで素直だしいい奴でなにも言わずに淹れてくれるのが………こっちをいちいちトキメキさせやがって、女殺しか!!
しかも、夜営の時に知ったけど料理も出来る。何で出来るかって聞いたら《作るなら旨い方がいいだろうが》ってさ! お前はいい男ランキング一位を目指してるのか!
まぁ、そんなオランの行動にルミナスが照れてるところも見れたから楽しかったけども
「私がやってることと言えば陰口と独り言のセットを毎日してるぐらいだもんね」
そんな私は仕事が終わってからここの水晶を使わせて貰い自分の力を確認しに行ったりもした
そこで不思議なことが起きた。知らない間に悪口のレベルが二十のMAXまで上がっていたんだから
「独り言がレベル十四になってる理由はわかるけど………悪口は使ってないんだよね」
力は使わないとレベルが絶対に上がらない。つまり、|何処かで発動し続けてる《・・・・・・・・・・・》ことになる。考えられる可能性は一つだけ
「特異型のクロギク………あいつにはまだ悪口の効果が続いてるんだ」
あれから半年以上も経過していて未だに効果が続いてるかどうかは私にはわからない。あまりにも多用しないのでセット数が何個だったのかもわからない。あれから増やしはしたものの正確な数がわからない限り使い続けてるかどうかの確認が出来ないんだよね
「でも、まだ続いてるとしたらこのデバフ能力はヤバイ。何時まで敵を蝕み続けるんだろう」
確かに私は死にかけたしそれだけのダメージを与えられた。そんな私の呪いとも言えるべき力はクロギクを未だに苦しませている………そう思うとざまあみろだ
「まぁ新しい力も二つ手に入ったし万々歳だよね」
一つは粗捜し………本当にこの称号はどうかしてる。人の嫌われることベストテンが入ってきてるんだもん。本当に嫌われものらしい力ばかりで私が嫌になりそうだ
「そんな粗捜しはぶっ壊れだしね」
訓練場を貸しきってオランとルミナスに協力してもらって検証した結果、粗捜しを掛けられた敵はあらゆる攻撃が大ダメージに変化するようだった
しかも、私だけじゃなくても関係ない。誰の攻撃だろうと信じられないダメージを叩き出すことになる。これを使われた敵はたまったものじゃないね
「これも陰口から発動出来るんだから狂ってる。そして、二つ目が念願の会話出来るスキル………ううん、会話を可能にするスキル、地獄耳」
セットした場所の音を広い私に届けてくれるスキルで複数の場所にセットして同時に音を拾っても混乱することなく聞き分けることが可能だ。言っちゃ悪いけどルミナスの斥候職の十八番の情報収集よりも優秀でアイシャ様に頼まれた貴族にセットして情報収集もしてる
「だから立ってるだけでも仕事してるもん!」
でも、よくわからない音声もたまに入る。例えて言うならAとBが話してるのにCも話してくるんだけど………そのCの存在がAとBに認識されてないような感じ。一人だけ別の事を直ぐ側で話してるのにしっかりと聞こえるってことは側にいるってことだと思うんだよね? 地獄耳からあまり離れると声が聞こえないってのはわかってるから側にいるはずなんだけど?
「………ま、まさかね?」
一瞬幽霊の声でも聞こえてるのかと考えちゃったけどまさかね? 地獄ってその地獄じゃないよね? 死者の声を聞くとか………ね? 考えてたら怖くなってきたから考えるの止めよう
「な、なによ?」
「一人で寝れなくなったから一緒に寝てぇ」
「はぁ? もぅ、好きにして」
呆れてるルミナスのベッドに入り込んでくっついて寝る。呆れてるけど拒否はされない。なんか………本当にごめんなさい
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