宗教とは
「まさかのまさかだったね」
「アイシャ様が警戒せよって言ってなかったら呆気に取られてたわ」
「やっぱり貴族は腐ってやがるな」
「王権を手にするために向こうは向こうで必死なのですよ」
アイシャ様はどこか寂しげで辛そうにも見える。本当はこんなことをしたくなくて嫌なんだ。やっぱり心優しい………
「ハァ、ティータお兄様がこの程度の浅はかな戦略を採用するなんて………怯えていたわたくしが愚かでした」
そっちかぁぁぁい!!
こっち向いてニコッてすんなぁ、思わず激しく突っ込んでしまったじゃんか。心優しいとか思ってしまった私の優しさ返してよ!
「本当に皆さん面白いですね」
楽しそうで何よりです。この人に振り回されながら旅が続くかと思うと疲れてきた。先は長いし気も長くもって気楽に行こ
スティアーシュゲル聖王国に入ってからも特に大きな変化はない。時折、魔物や闇の魔物の襲撃はあるものの基本的に平和そのもの。違いと言えばどんな小さな村でも立派な教会が建築されてるぐらいだろうか
「みんな朝からお祈りしてるしね」
「この国は狂ってんだよ。神に祈ったところで助けてくれやしねぇのによ」
「流石にそれには同感だわ」
「ですが、祈ることで心が救われる人もいるのも事実なのです。誰にも打ち明けられない苦しみや悲しみ、それらを神はなにも言わず全てを受け止めてくれる。思いを吐露するだけでも人は少なからず救われるのですよ」
まさか王女様が宗教をそんな風にとらえていたなんて重いもしなかった。そして、言われてみれば確かにそう考えることも出来る。誰だって人には打ち明けられない哀しみや苦しみは一つや二つは持ってる。そんな悩みを唯一聞いてくれるのが神様だと言うのなら、心が救われるのは間違いないか
「アイシャ様がそんな風に考えてたなんて意外でした」
「そうですか? わたくしが最も慕っていた叔母が宗教国家に嫁いだのです、宗教の事を自分なりに調べ解釈したのですよ」
アイシャ様の解釈は次の通りだった
神は誰も救わない、誰かを救えばそれは不平等なってしまうから。全てを救うのは容易いことかもしれないが全てを救えば人は自ら立ち上がる力を失ってしまう。だが、神は一つだけ人々に救いの力を与えた
それが………称号
「称号の力は誰しもが持ってることはわかっています。その証拠に魔族の国では国民全員に称号の力を覚醒させています。ですが、我が国はそれを致しませんしわたくしも行おうとは思いません。そもそも魔国は出生率が低く種族ごとに集まっているので全体の管理がしやすい上に強さを大切にする風習があります。暗黒大陸に住む魔物はこちらと違い凶悪で一人一人が強くないと直ぐに死んでしまうと言う理由もありますからね」
そうか、人の国と魔族の国では全く考え方も環境も違うから称号を国民全員が使えるようにしてるんだ。私は勝手に神様から貰える特別な力で頑張った人だけのご褒美だとか勘違いしていた。称号は誰にでも手に入る力で特別でもなんでもない当たり前の力なんだ
「ですので人は神に救いを求め心の癒しを求めるのですよ。実際の救いは私たち国が行わなければなりません。スティアーシュゲル聖王国も宗教国家でありながら王と教皇の二人がそれぞれ政権を握ってるようなものですから」
「つまり………?」
「ハァ、わかりやすく言うと政治は王が世界の教会を教皇がしきってるのよ。宗教国家として神の御業としか思えないような称号の扱いは全て教会が取り仕切ってるの。その総本山であるスティアーシュゲル聖王国はどの国からも切っては切れない関係だから重要視されてるってこと」
確かに言われてみれば称号の付与は教会で行われていた。と言うか、何らかの儀式を行う時は必ず教会だ。一月から十二月までなんらかのイベントを常に教会で行っていて様々な人たちが集まってる
時には祭りになるようなイベントもあるから庶民にとって教会へと行くことは楽しみの一つでもある
そんな教会にしたのが初代教皇様だと学校で教わったっけ
「そんな教会は今では生活から切り離せません。スティアーシュゲル聖王国の民たちの誇りであり全てとなっています。世界に浸透している教会が自分達の国発祥なのですから」
それもそっか、私も自分が王都の学校を卒業したってのは誇りだし自慢したいぐらいだ。入学するだけでもかなりの厳しい戦いを強いられるのに入学してからも常に篩に掛けられて卒業したってのは人生に置いて最高の自慢話だもんね
「そんな教皇に会えれば会いたいのですが、一国の王女でも会えるかどうか………彼と会い助力が叶えば一気に優勢に変わります。彼の一声は世界の声と捉えられますから」
「うっし、会えるように頑張りましょう!」
「頑張ったからってどうにかなるわけないでしょうが」
「冷たいこと言わないでよぉ」
「現実教えないとわからない馬鹿もいるからね」
「あぁん? 俺に言ってんのか?」
「思い込み激しいんじゃない? 一言もあんたとは言ってないわよ!」
また二人の夫婦喧嘩が始まったのを無視して私たちは旅を続けていく。そして、一週間の旅路を得て遂に聖都スティアーシュゲルに辿り着くのだった
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