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隣国スティアーシュゲル聖王国へ

「何でこうなるの?」


「何度も同じこと言わない! 黙って歩きなさいよ!」


「………へぃ」


信じられないことが起きた………いや、言ってることはわかるんだけど、普通に考えたらあり得ないでしょって現象が起きてしまっている。アイシャ様の護衛が私たち三人だけと言う訳のわからない状況なのだ


その理由が………


「申し訳ありません。誰が裏切り者か判明出来ませんでしたので。メイドさえ信用出来ない状況に陥るとは思いませんでした」


「いえ、アイシャ様を責めてる訳じゃないんです。一国の王女様に何かあったときの私の首の心配をしてるんです」


「そこは信用しています。お三方なら何事もなくスティアーシュゲル聖王国へとお連れしてくれると信じてます」


「あんな腐りきった国に行くとかどうかしてるぜ」


私たちはオランの母国であるスティアーシュゲル聖王国へと向けて行く事になった

理由は幾つかあるけど大きな理由がメディアバーニヤから最も近い国がスティアーシュゲル聖王国だったと言うわけだ


もう一つの大きな理由がアイシャ様の一番の理解者となるだろう叔母様がいるそうだ。現国王の妻として政界にも進出しておりかなりの力を持っている。故に先ずはスティアーシュゲル聖王国にいる叔母を訪ね力を貸して貰うのも理由の一つだそう


「………凄く機嫌が良さそうだよね」


「そうね。オランはかなりイライラしてるけどね」


そんなアイシャ様は馬に乗って移動しており手綱を握ってるのはオランだ。時折、オランに話しかけて悪態を吐かれるんだけど………どうも、それを楽しんでる様子にしか見えない。オランのように王女に特別扱いしない人間なんて貴重で面白いんだろうね


そんなルミナスもかなり機嫌が悪い。さっきから怒気が洩れており忌々しそうにアイシャ様を睨んでる。絶対にオランと楽しそうに話してるのを嫉妬してるじゃん。もう好きって言っちゃえばいいのに………そんなルミナスに気付いてアイシャ様は余計にオランに話し掛けてるんだから止めた方がいいって


「空気悪っ」


オランもルミナスもイライラ、そんな状況をからかって楽しむアイシャ様、私は必死に空気になってやり過ごしてるけど空気が重い。この状況をどうにか打破しないと押し潰されて死んでしまうわ


「………おぃ、魔物が来るぞ」


「へぇ、イライラしてたから丁度いいわ」


「同感だ。ぶちのめしてやる」


あっ、八つ当たりにされるやつだ。確かに森の方から何かが接近してきてる。よく見るとワイルドウルフの群れだ。う~ん、この二人のストレス発散になるなんて御愁傷様です


「………素材取れないね」


「ふん」


「よえぇのが悪い」


あんたらね………ルミナスは毒まみれにして素材を破壊してるし、オランなんて相当イライラしてたみたいで一発殴っただけで爆散して肉片すら残ってない。旅の路銀になるんだから手加減ってものをしてよね


「クスクス、本当に面白いですね」


「もぅ楽しまないで下さい!」


「申し訳ありません。こんな自由な時間は生まれて初めてでしたので楽しくてつい」


そか、アイシャ様は生まれた時から王女様でずっと教育とか礼儀とか様々なことを押し付けられて育ってきたんだ。そんな環境て自由な時間なんて許されるわけもなく王女として相応しい立ち振舞いを常に求められてきた。なら、少しぐらい………


「………チラッ」


「次の獲物はどこだ!!」


「まだ殺したりないわ! さっさと見つけなさいよ、木偶の坊!」


「あんだと? ぶっ殺すぞ!」


「殺れるもんなら殺ってみなさいよ」


「もぅ止めない」


「クスクスクスクス」


駄目だ、アイシャ様を自由にさせておいたら騎士団の仲間同士で殺し合いが始まってしまう。そんな事になったら私は責任を追及されて最悪、私の首が飛ぶ。程々にしてもらって大人しく過ごして貰おう


「あの二人をからかうのは禁止ですからね!」


「前向きに検討するよう善処しますね」


絶対に遊んでるだろ? それってもっとからかって楽しみますって言ってるのと同じだかんね? アイシャ様が性格悪いなんて知らなかった。これだけはバーニア団長を恨みます


そんな私たちは何度か様々な魔物と遭遇しながらも国境へと辿り着いた。あまりにも上手い具合に事が運びすぎて不気味なぐらいだ。流石のアイシャ様も何かあるから警戒しろと私たちに言いフードを目深に被って顔を隠しながら移動していたぐらいだ。一応、国境には辺境伯様が用意してくれた冒険者のギルドカードで通れるようにしてある。その名前も偽名でオランはコロシア、ルミナスはエフィー、私はノアと名前が全く変わってる。アイシャ様の身分証もエイヴァと変えていて本人とわからないようにローブには認識阻害の効果がつけられてある。アイシャ様の本人の顔を見たとしても私たちでも誰だろうと思うぐらいなのだなら国境警備隊でもわからないはずだ


「身分証を」


「はい」


私が代表してみんなの身分証を国境警備隊に渡す。偽物とは言え本当のギルドが作成したカードなので偽物と気付かれるわけがない。国境警備隊のお兄さんも異変に気付くことなく私たちを通そうとしてくれたんだけど………


「待ちたまえ」


国境警備隊の詰め所から一人の偉そうな軍人が出てきた。そして、持ってる紙を私たちに突き付けるように見せつけた


「貴様ら手配書の四人だな?」


「「「「!?」」」」


そこには私たちの顔そっくりに描かれた手配書が用意されておりDEAD OR ALIVEと書かれていた

つまり、生死を問わず連れてくれば賞金を渡すと言うもの。まさかアイシャ王女を賞金首にしてくるとは予想出来ず困惑してしまったけど、真っ先に動いたのはオランとルミナスだ。オランは馬を走らせ扉を全力で殴り強制的に国境への道を作りルミナスはナイフを国境警備隊の手に投げ武器を取らせないようにした


【スピードブースト】


こんなこともあろうと全員に陰口をセットしといてよかった。一気に走り抜けて私たちは隣国スティアーシュゲル聖王国へと入ることに成功したのだった

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