帰還
「何とか着いたかな?」
「王女様も辺境伯の屋敷に送り届けたし任務は完了ね」
「オランには悪いけど私たちは休もっか」
「えぇ、あいつの不機嫌な顔………今、思い出しても笑えるわ」
あれから襲撃は一度もなく無事にメディアバーニヤへと辿り着くことに成功した。私もルミナスもないだろうなと思っていたからそこまで警戒してなかったから精神的にも参ってない。その為にあれだけの圧倒的な魔法で敵を追い払ったんだから
「来るとしたら街中だよね?」
「でしょうね? 騒ぎを起こして混乱のなか………って感じかしら」
やっぱりそう思うかぁ。私でもそうするしその方が実行に移しやすい。街のなかにアンデッドが現れれば私は大規模な魔法は使えないし対応に追われて騎士団は街中を翻弄することになる。そうすれば姫様の護衛は当然ながら手薄になりやすいから狙いやすくなる。わかっていても防げないから困るんだよね
「まぁ対策は打つけどさ」
「あんたの称号の力ってかなり万能過ぎない? キモいんだけど」
「嫉妬? わかるぅ~実力がない奴ほど嫉妬するよねぇ」
「はぁ? キモいって言ってんの! 誰があんたなんかに嫉妬するか!」
こんな軽口を叩けるくらいに仲良くはなったけどまだまだ距離感はある。ルミナスも何処か遠慮してるのがわかるし気を遣ってくれてる。まぁそこら辺は時間が解決かな
「失礼します」
私はルミナスと一緒に副団長室がいる執務室へと向かった。団長は今不在で何処かに行ったと騎士団の人たちが教えてくれたからだ。執務室に行くと何時ものように書類仕事をしてるエミリアさんがいてこちらを見て爽やかな笑みを見せて座るように促してきた
「早速ですが報告して貰えますか?」
「はい」
襲撃事件が起きたことは陰口によって伝えてある。だけど、どんなことが起きたとかの詳細は言ってない。陰口は会話の一方通行だから私が話したいことを話すだけ。団長や副団長が聞きたいことは聞けないのでこの場で話さないとならない。本当にこれどうにかならないのかな?
「詳細はわかりました。お二方の考えは間違いなくあってるでしょう。こちらがネクロマンシーの称号持ちを王都に訪ねても調べると返答を貰ってから連絡はありません。おそらく知らせては来ないでしょうね」
「やっぱり兄弟の誰か? もしくは強い力を持った貴族が?」
「えぇ、間違いなく噛んでるでしょうね。第一王女を狙ってると考えられるのは………エフォルド・フォン・エーゼルド公爵でしょう」
「「!?」」
その名はまさかのルミナスの父親だった。エミリアさんもわかってて告げたんだ。今回の敵はあなたの父親ですが覚悟はあるかと訪ねてる。ルミナスは若干震えててどうするか悩んでるみたいだ
「先にお尋ねします。エーゼルド公爵からなにか連絡は?」
「………手紙が来てましたが開封はしてません。ドタバタしていたので後回しにしていました」
「正直にお話しして貰えますか?」
「………すいません。今回の情報は私が父上に伝えました」
まさか情報を漏らしていたのがルミナスだったなんて思いもしなかった。副団長は気付いていたようで気にする様子もない。むしろルミナスに同情してるようだった
「クロエにも伝えておきますがエーゼルド公爵は目的のためなら自身の子でも容赦なく殺します。貴族派筆頭で第一王子を王にしようと動いてる方で王になる筆頭と言われてるのが第一王子と第一王女の二人。つまり、エーゼルド公爵にとってアイシャ王女は邪魔物でしかないんですよ」
「………る、ルミナス? 大丈夫?」
「………」
そんな冷酷で無慈悲な人って存在してるんだ。だけど、これが貴族の世界で当然の行為なんだ。私は考えが甘かったかもしれない。民衆からお金をむしり取って贅沢してるのは一部で、そんな人たちなんて可愛い存在で、もっと上は残酷なようなことを平気で行ってる人たちなんだ
「今回の件は不問とするようにとアイシャ王女からお達しが来ています。おそらくルミナスには情報を聞き出す以上のことはしてこないでしょう。かなりの切れ者でルミナスの性格は熟知していますしこちらのことも知り尽くしてる方です。ルミナスは既に用済みになってると考えてもいいかと」
「そ、そうなんですね? よかったぁ」
「そうよ、あんたは心配しすぎ。だから逆に利用されてる振りをして情報を聞き出してやるわ」
「うわぁ、ルミナスの性格の悪さが出た」
「ふふっ、私を誰だと思ってるの? 最低の父親に育てられたのよ?」
私たちが笑いあってるなか副団長も微笑ましく私たちを見てた。そんな簡単な会議も終わりその日は眠りにつく。次の日の早朝に呼び出され私は辺境伯様の屋敷に行く事になった。何でもアイシャ王女様が私を呼んでるのだとかで
「失礼します」
屋敷に行くと執事の人が私を待っていたようで直ぐに応接室へと案内してくれた。真っ直ぐ応接室に向かい部屋に入室するとアイシャ様と辺境伯様、オランの三人しかいなかったのだった
「えっ? 護衛は?」
「今は外して貰っています。クロエさんの力を知られるわけには行かないでしょう?」
「アイシャ様はご存知なのですね?」
「すまなかった。だが、アイシャ様を護るにはクロエの力がどうしても必要だ。知らせて作戦を練りたかったのだよ。これに対して給金は弾ませて貰う」
「い、いえ、私も教えようと思ってたので構いません」
アイシャ様が座り私は目の前に着席した。辺境伯様も着席しオランはどうするのかなと思ってたら王女様の後ろに立っていた。ちゃんと仕事はするのね
「用件は王女様に陰口、独り言をセットすればいいんですね?」
「そうです。ちなみに独り言はどんな魔法でもセット出来るのですか?」
「どんな魔法でもと言うと過大になります。私が使える魔法に限りますね」
「そうですか………では………アイシクルの魔法はどうでしょうか?」
「そんな魔法でいいんですか? 初歩魔法ですよ?」
「えぇ、称号持ちの魔法使いと言うだけで上級魔法使いとして認定されてるようなもの。ここに来る前にクロエさんの成績を見せて貰っていますし特級魔法使い認定試験を合格してますよね?」
「えぇ、そうしないと称号が手に入りそうになかったので」
私の同期たちは全体的にレベルが高く黄金世代だとも言われていて従来なら上級魔法使いの試験を突破して認定書を貰えばよかったんだけど今回の上級魔法使い合格者は五十名オーバーの異常事態
称号持ちは上位十名だけの狭き門。故に特級は必然的に必須となってしまったんだよね
まぁ合格できたのは今回三名だけって言うか学生の身分で合格者が出ただけでも奇跡らしいし本当なら十年連続で落ちる人もいるぐらいなんだから
「それでしたら安心どころか十分すぎます。私もアイシクルが使えますので」
「あぁ、納得です」
王族は学校には通えないと言うか通ってはいけなかった。あそこはあくまでも貴族や一般の子供たちが将来、国の重要スポットとして働けるように育成する機関だ。王族がそんなところに来ていいものではない。ルミナスの場合は三女だから公爵家を継ぐわけでもない。だから国の重要スポットに絶対に入らなければならず必死になってたってわけなんだよね
だから王族が魔法を使えるって言うだけで実は凄いことだったりする。王族は学ぶことが多いらしいし魔法を覚えてる暇がないみたいなことを学校に通ってるときに聞いた。魔法は一年や二年で習得出来るほど簡単なもんじゃないから初歩と言えど使えるんだから尊敬するかも
それにアイシクルの魔法を選択した理由がわかった。これは逃走用に使いやすいからだ。自分を中心にあらゆるものを凍り付かせるアイシクルは初歩ながら強力だけど使い手がかなりの魔法の使い手じゃないと足元を凍らせるだけの魔法だ。つまり、逃走するために使いやすく相手の動きを封じるには都合がいいってことね。私との二重でかなりの広範囲を凍らせれるからね
いいねや高評価してくれると嬉しいです。ブックマークが増えると作者は小躍りします。誤字、脱字の報告何時でも受け付けてます




