王女アイシャとの出会い
「クロエ、王女様がもうすぐ着くと早馬で知らせに来たぞ」
「本当ですか。出迎えの準備を」
「任せとけ」
隣の領地………ヘルトウェイブ領からメディアバーニヤ領の境界でテントを張ること一日。第一王女がもうすぐ来ると向こうから早馬で知らせに来た
自分たちの領地で不手際が起きないように、自分たちはこれだけ王女様のために動きましたよ。と、恩義を売るために。力を誇示するために。他の領地に侮られないために。その領地の貴族は権力や威厳を見せびらかすために必死になってるんだから
「オランはぜぇぇぇったいに口開いちゃ駄目だかんね!」
「けっ、わぁってるよ」
「王女様に喧嘩売ったら首が本当に飛ぶから冗談抜きで黙ってなさいよ?」
「てめぇの減らず口はいいのかよ?」
「私はあんたと違って状況と相手をちゃんと見てるわよ!」
今回はルミナスの味方かな。オランは気に入らない相手には直ぐに喧嘩売るから凄く心配してしまう。昨日の夜もかなり忠告したけど不安でしかないもん
そんなオランは私とルミナス二人にかなり責められて流石にシュンとなってた。普段の自分の態度が悪いとわかってるんだろうけど直せないんだろうね。悪いけどそうしてもらえる方が今回は助かるからいじけてててね
「クロエ、来たぞ!」
向こうの領地からこちらの領地は川を隔てた橋一本でわかれてるだけ。この橋を越えてきたらメディアバーニヤ領へと変わり私たちが王族を責任持って街まで連れていかないとならない。ここで何かあったら私たちの面子ではなく辺境伯様の面子が潰れることを示唆してるから
「我らはヘルトウェイブ領のヘルト騎士団! これより第一王女の護衛任務を完了し引き継ぎたい! メディアバーニヤの代表! これよりお願い申し上げる!」
「これよりメディア騎士団が第一王女の護衛任務を引き継ぎいたします! ヘルト騎士団の皆様方、守備隊の皆様、今日一日のご尽力に感謝します!」
橋を渡った向こうで騎士団が敬礼をしながら向上を述べてる最中は王女が馬車のそばで私たちを見守っている。そして、橋の向こうから一人の騎士が走ってきて引き継ぎを意味する剣と盾を渡してきた
「剣と盾を」
「闇夜を切り裂き繁栄を願う剣と人々を護り明るい未来を照らす盾。確かに受け取りました」
これは王女を狙う悪しきものを切り裂き悪しきものから守ってくれ。そんな願いも込められた儀式用の剣で実践では全く使えない飾りが豪勢なだけの剣と盾だ。これを受け取ったら王女たちが橋を歩いて渡り私たちが護衛することとなる。まぁ、王都からの騎士団と守備隊もいるから実際は私たちは必要ないんだけどね
「お初にお目にかかります。アイシャ・フォン・ルースフィアと申します。あなた方が特異型を追い払ったと言うお三方でしょうか?」
「はい、お初にお目にかかります。三人のリーダーをさせて貰ってるクロエ・セレナートと申します」
「ご無沙汰しております。ルミナス・フォン・エーゼルドです」
「………」
「この無愛想なのはオランと申しまして礼儀をまだ勉学中となっております。このような無礼をお許しください」
「構いませんよルミナス。話しは聞いております。大変な苦労をして育ったと」
「お、王女様?」
信じられないことに王女様は周囲の制止を制してオランに近付いていく。オランは気にしてるなぁ、何だこいつみたいな目で睨んでて護衛の騎士たちがオランを睨んでる。絶対にいざこざ起きる奴じゃん! 王女様は何考えてんの?
「初めましてオラン様、スティアーシュゲル聖王国から来たと聞き及んでおります。こちらの国はどうですか?」
「………」
「クロエ様、オラン様に話すなと申したのですね? 彼に話すように許可を出してください」
「うっ、口が悪いので………そ、その………」
「構いません。許可を」
何でそんなことがわかるの。本当に口が悪いし大変なことになるから止めて欲しいけど………王女様が言ったんだからね? 私は悪くないもん!
「口開いていいのかよ?」
「う、うん。失礼なことは絶対言わないでね」
「知るかよ」
オランに王女様の質問に答える許可を出して喧嘩を売るようなことはしないようにと念押ししたけど………絶対アイツはやらかすよな?
「この国はどうですか?」
そんな王女様は私たちの気持ちを知ってか知らずか恐ろしいことを聞いてくる。アイツの事だから絶対に………
「かわんねぇよ。どいつもこいつも貴族ってのは腐ってやがる。どれだけ俺たちのような立場の弱い人間が死のうと知ったこっちゃねえんだ」
「えぇ、同感です。口を開けば民のため国のため。どの口がそれを言ってるのか問い質したいぐらいです。では、オラン様は当然ながら違いますよね?」
その言葉を発する王女様は顔は笑顔なのにどこか氷のように冷たく残虐無比な女性にも見えてしまった。ルミナスを見ると気にしてる様子はなく耳打ちで《あれが本性よ》と、教えてくれた。つまり、無能な貴族はいらないと考えてるお方なのだと知れたのだ
「あぁ? 俺はてめぇが護りたいもんだけ護る。他人なんか知るかよ」
「………くすくす、そうですか。では、わたくしのことも護ってくれますか?」
「あぁ? てめぇのことなんか知るか。今は護れって言われてるから助けるがそうじゃなかったら知るかよ」
呆気に取られた王女様は護ってくれとお願いするとオランはそれを拒否した。あぁこれで私たちの首も飛ぶ。オランは絶対にそういう奴だと思ってたよ
「貴様ぁ! 黙って聞いておれば!」
「よしなさい!!」
「で、ですがアイシャ様!」
「わたくしの言葉が聞けぬなら今すぐ王都へと帰りなさい。わたくしが無礼を許すと言ってるのです。彼はそれに答えてくれた。何が問題なのですか?」
「ぐっ、し、失礼しました」
アイシャ様の護衛の騎士が剣を抜いてオランに斬りかかろうとしたけどオランは動じずやれるもんならやってみろと迎え撃とうとしたがアイシャが護衛の騎士を制してさせなかった。もし制してなかったらオランと護衛騎士の戦いになっていたと思う。称号持ち同士だと思うけどそんな喧嘩になったら………絶対大変なことになってた
「では、お互いの願いを叶えあいませんか?」
「あぁ? 俺に何のメリットがあんだよ?」
「王族に願いを叶えさせる。それはどんなことも叶うと言ってるのと同義ですが?」
そうなんだよ。だからこそ王族が口を開き願いを叶えるなんて絶対に言っちゃいけない。周囲の護衛も慌てるように動揺してアイシャを制止しようとするけどアイシャは無視して笑顔でオランに向き合ってる。何がしたいのかさっぱりわからない。何考えてんのよ?
「………俺の願いが気に入らねぇ貴族の皆殺しでもかよ?」
「構いませんよ。それで宜しいですか?」
「てめぇの願いはなんだ?」
「わたくしを護ってください。わたくしの側にいる時は何があろうと全力で」
オランが戸惑ってる。って言うかこの場にいる全員が戸惑ってる。何であんなことを言い出したんだろうか? その時の私たちには本当に何もわかっていなかった。まさかアイシャ様の狙いがとんでもないことだと知るのはしばらくしてからなんだから
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