メディアバーニヤへ
「ここがバーニアさんたちが勤めてる場所ですか?」
「そうだ! 辺境だがルースフィア王国最大の防衛都市でもあるんだ。その名もメディアバーニヤだ!」
学校がある王都から馬車で移動すること二週間。道中、何度も闇の魔物の襲撃があったけどバーニアさんの騎士団が守ってくれて危険なことは一度もなかった
エミリアさんと言う人には出会えなかったけどバーニアさん曰く手続きの関係で王都に残ってるみたい
どんな人か会ってみたいけど少しだけ怖そうだから勇気が出たときに会いたいな
「リブロイ様。本当にありがとう」
リブロイ様と最後のお別れをする時間を与えてくれたのも本当に感謝してる
リブロイ様は最後まで私を優しく抱き締めてくれてバーニアさんの騎士団に行くことを心から喜んでくれた
そんなリブロイ様の最後の言葉を私は絶対に忘れない
『神は君に試練を与えたのかもしれない。それは神が君を認めたことを意味する。この試練を乗り越え大きく活躍する日が私には見える。辛くなったら帰っておいで。私はいつまでもここにいるから』
そんな優しい声と瞳が私は忘れられない。本当は私の小さな恋心がそこで散ったんだけど告白は後悔してない。だって、私は一生、リブロイ様が大好きな自信があるし尊敬もし続ける。あんな素敵な大人に私もなりたいもん
「ここが今日からお前の過ごす騎士団だ」
騎士団の過ごす庁舎に連れていかれると百人近い人たちが汗水流して訓練に明け暮れていた。見ただけで厳しい訓練なのがわかる。全員が乱れることなく同じリズムで素振りをしていて手首には重りをつけてるようだった
持ってる剣も剣と言うかハンマーでかなり重そう。なんでもどんな辛い状況でも剣を手放さないように握力を鍛えてるんだとか。これを一時間ずっと続けるって聞かされた時は逃げたくなったのは言わないでおこう
「さて、私は辺境伯にお前のことを伝えに行かないと駄目なんだ。案内は………いたいた! おーい、シュバルツ!」
「おっ、団長帰ったんすか?」
書類も持って廊下を歩いていた物腰の柔らかそうなお兄さんは小走りでこっちに向かってきた
そんなお兄さんは私を見ると爽やかな笑顔で見つめて軽くウインクする。なんか軽そうな男の人だな
「この子は称号持ちの新人でクロエだ! 後、部屋に案内して騎士団の内部も案内してやってくれ」
「へいへい。こう見えても誰かさんのせいで忙しいんですけどね?」
「ハッハハ! 何時ものことだろ? 頼んだからな」
バーニアさんはどこかへと歩いて去っていきシュバルツさんと呼ばれた人は呆れた溜め息をしてる。でも、慣れてるようで気にすることもなく私に話しかけてきた
「噂の嫌われ者の称号を手にしたクロエちゃんだろ?」
「………はぃ」
「アハハ、君の称号て面白いよね。どんな凄い力を秘めてるんだろうと思うとワクワクするよ。後で鑑定水晶で見ようね」
「鑑定水晶?」
称号持ちが少ないので鑑定水晶は知られてないみたいで効果は称号に秘められた力を教えてくれる物みたい
シュバルツさんはスナイパーって言う称号で最初は必中だけの力しか持ってなかったけどそこから枝分かれしてどんどん強くしてるんだと教えてくれた
「スキルは成長すると枝が別れるんだ。そこから選択して強くしていくタイプもあって俺はそのタイプ。俺の場合とかだとうちは弓使いが少なくて後方支援が少なくてさ。手数で攻めれるよう選択してるんだよ」
「へぇ」
「そしたら異名が逃げ腰のシュバルツだぜ? ひどいと思わねえ?」
「クスッ、それはひどいですね」
「だろ? 逃げてるんじゃなくて支えてるんだっつうの!」
シュバルツさんは私を終始笑わせてくれてる。きっと気を遣って優しくしてくれてるんだと思う。ここはなんか暖かいなと思ったらバーニアさんが明るいからみんな優しくて明るいのかもしれない。そう思うと私は本当に恵まれたのかもしれない
それから騎士団の内部の施設を見せてくれた
図書室や食堂、室内訓練場や室外訓練場、魔法訓練場。室内のトレーニングルームも充実してて医務室も凄く広い。避難所も併設されていてメディアバーニヤの住民を避難させるために存在してるんだって。一度も使われたことがないみたいでこれからも使われる予定がないことを祈ってるってシュバルツさんは嬉しそうに誇ってた。きっと、それだけ大変なことが何度もあったけど乗り越えてきたんだと思う。その瞳には大きな決意とか覚悟が宿って見えたから
「で、ここがクロエちゃんの部屋ね」
「こ、個室ですか?」
「そだよ。称号持ちは個室って決まってるんだ。負担が大きいから待遇だけでもよくしようって決まりなんだよ」
学校でも四人部屋で同部屋の女の子から冷たい待遇を受けていたから部屋にはあまりいなかったのに個室なんて贅沢すぎる。私なんて新人で訳のわからない称号持ちなのに本当にいいのかな?
「荷物を置いたら鑑定に行こうか。書類もいい加減置きたいし俺もクロエちゃんの力を知りたいしね」
「は、はい!」
私が戸惑ってるのを知ってか知らずか荷物を置くように急かされて鑑定をしに執務室によってから地下室へと歩いていった。そこには厳重に鍵の閉められた扉の前に騎士の二人がいた部屋だった
「これが………」
「そっ、でかいでしょ」
巨大な水晶と言うかクリスタルが空中に浮かんでて青く光輝いていた。シュバルツさんはこれに手を振れるように言うと白く輝いて文字が浮かんできた
「………」
「………ふっ、本当に面白いね」
「笑わないでくださいよ! ほんとうにこの称号やだ!」
そこに書かれていた文字は陰口と書かれていた。全く意味わかんないしなんなのこれ? 全く謎なんだけど!
「ここで使うのもあれだし………魔法訓練場で使ってみようか? あそこなら多少の事故なら問題ないから」
「はぃ」
魔法訓練場に移動して私は力の使い方を教えて貰った。基本的に使いたい力の名を告げると使えるとのことで発動条件とかは試さないとわからないとのことだった
「じゃ、藁人形に力を使ってみて」
「はぃ」
【陰口】
場を沈黙が支配して何も起こる様子がない。この場には私とシュバルツさんしかいないからほんとうに静かな場所。遠くの方で騎士団のみんなの訓練の声が聞こえるぐらいで不気味なぐらい静かだった
「な、何も起きないね?」
「「わけわか………へっ?」」
「ど、どうなってる?」
私の声が二重に聞こえたと言うか藁人形から声が聞こえた。もしかして陰口って………
「「私が話す内容が別の場所で聞けるってこと?」」
「どうやらそうみたいだ。これはかなり使える! やっぱりクロエちゃんの称号も凄かったね。こんな優秀な力は聞いたことがないよ!」
「ほ、本当ですか?」
「勿論だって! これは試してみたいことが沢山あるけど………使いようによっては被害も抑えられるし作戦遂行に重宝できる! めちゃんこ凄いよ!」
シュバルツさんの言うようにこれは凄いと思えた。少しだけだけどこの称号が好きになれたかも
でも、私もシュバルツさんもこの時は気付かなかった………と言うかどうやって気付けと言うのかわからなかった。こんな恐ろしいとも言える人を救うことにも敵を殲滅するにも相応しい凄まじい力を秘めてるなんて知らなかったんだから
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