悪口の取扱い説明書
「構わないぞ!」
「有り難う御座います!」
騎士の先輩に実験台になって欲しいとお願いすると笑顔で速攻了承してくれた。どんな危険があるかわからないのに本当に先輩には感謝しかない
訓練に参加してくれるのはディー先輩とブロンクス先輩。私がルナ先輩に鍛えられてる時に優しくしてくれた先輩だ
「では、いきます!」
【悪口】
「「………」」
実は闇の魔物に使ったことがある。だけど、使った魔物に効果があったりなかったりする。その効果はステータス低下だと思われた。動きが鈍る魔物がいてそれプラス倒しやすくなると言うか受けるダメージが増加してる様子だった。つまり、悪口はデバフスキルではないかと思ってるんだけど………効果が出たりでなかったりの違いがわからないんだよね
「ど、どうですか?」
「いや? 俺は何とも?」
「俺もだな? 体が重いとか感じないぞ?」
試しに二人で模擬戦を軽くして貰ってもやはり変化してないと言う。発生条件を満たしてないから効果が出てないってことだよね?
「悪口なんだからクロエちゃんが悪口言ったら発動するとか?」
「あり得るな。クロエちゃん言ってみな」
「え、えぇ………で、ディー先輩の………オバカサマ! ブロンクス先輩のオアホサマ」
二人はキョトンとして顔を見合わせてけらけら笑う。悪口を言うのは好きじゃないのに言わされてしまった私は顔が真っ赤だ。なのに、結果は変わらないと言うもので散々だった。悪口の量が足りないんじゃないかと言われたので必死になって沢山言ってみたけど効果無しだ
「感情がこもってないとか?」
「心から言わないと駄目とか?」
「………もう言いませんし言えません! 私はお二人が好きなんです!」
「おっ? 愛の告白された」
「すまん! 俺には嫁が!」
「そういう意味じゃないです!」
私は二人をポカポカ殴って叩いていく。二人とも笑って酷いよ。でも悪口のスキルの効果が全くわからない。そう思っていたら二人の顔が豹変した
「………か、体が重い」
「くっ? 立ってられないぞ?」
「えっ? えぇ?」
ふざけてるのかと思ったら違ったようだ。そこからデバフの効果は約十分ほどで効果が切れるとわかった。でも、何で効果が現れたの?
「先ず何があったか思い出してみるか」
「あぁ、先ず最初にクロエちゃんの愛の告白だ!」
「愛の告白じゃないです!」
また二人をポカポカ叩いて必死に否定する。二人とも笑っていてからかってくるんだもん。こんな小さな子をかかって何が楽しいんだが
「次にこれだよな?」
「クロエちゃんの攻撃だ」
「あっ、確かに」
私が二人をポカポカ殴っているとディー先輩がそれを指差してきた。つまり、私の攻撃が発動条件ではないかと言ってきたのだ。確かにそれはあるかも試してみよ
【悪口】
二人に悪口を発動させて殴ってみる。そして何分経過しても効果は現れない。私の攻撃が発動条件ではなかったことがわかったのだった
「わかんないよぉ」
「振り出しか」
「何かあったか?」
思い出しても殴った以外で私がからかわれたぐらいで………からかわれたぐらい? えっ? どう言うこと? いや、待って? 闇の魔物にからかわれたことなんてない。でも、二人からは私に触れてないしからかっていただけ
えっ? えっ? えぇ?
「クロエちゃん、何か気付いたのか?」
「た、試していいですか?」
「あぁ、構わんぞ」
「私の悪口を言って貰えませんか?」
「「はぁ?」」
二人はなに言ってんだって顔をして私を見てる。その気持ちはわかるんだけどそれしかないんだもん。私だって変なことを言ってる自覚あるんだよ!
「クロエちゃんの馬鹿?」
「クロエちゃんのアホ?」
だけど、この見当違いの考え方がまさかの正解だった。二人はまた動けなくなり地面に突っ伏したんだから
「………」「………」「………」
効果が切れてから三人とも考えてしまった。闇の魔物は普通の魔物と違い生きていない。正確には魔法生物のようなもので死んでも死体が残らず灰となって消えていくからだ。そんな闇の魔物が私の悪口を言ったとは考えにくいし言っていたとしたら発動にばらつきがあった理由がわからない。言ったり言わなかったりしたってことなのかもしれないけど………
「仮説なんだけどさ?」
「おぅ、言ってみ」
「クロエちゃんに対する攻撃が発動条件とか?」
「「!!」」
ディー先輩の言う通り悪口を言うのも心の攻撃のようなもの。なら、物理的な攻撃も発動条件だった場合、闇の魔物が発動したりしなかったりする理由がわかるかも
「やってみよう」
ディー先輩の判断は正解だった。私の頭を軽くこついたブロンクス先輩にデバフが発動したのだ。まさに発動条件は私に対する攻撃だったんだ
「えげつないな」
「範囲はわかってるのか?」
「まだです。試していいですか?」
そこから時間をかけて悪口の届く範囲を調べた。悪口は大体、二メートル内のいる対象にしかセット出来ないことがわかった。そして、ディー先輩とブロンクス先輩は頭を悩ませてしまっていたのだ
「ルナは近接も遠距離も得意だからな」
「クロエちゃんに不用意に近付くようなヘマする奴じゃないし」
確かにあれからルナ先輩は私を警戒して近寄ってこない。陰口でどんなデバフ魔法を仕込まれるかわからないし自分の服が攻撃してこられたらたまったもんじゃない。だから一定の距離を常に保ってるもんね
「色々検証させてください!」
「任せろ!」
「とことん付き合うぞ!」
私にとって利点があるとするなら悪口の発動条件はディー先輩とブロンクス先輩しか知らないこと
二人は絶対に話さないと誓ってくれたし合格して欲しいと言ってくれた。検証が終えたら後はギリギリまで自分の魔力を高める訓練をしとかないと
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