ヘビイチゴの段
悲しい。益人ではなかった、あの子。
例によって人間は雨上がりにひときわでっかくなったり増えたりしているのだが、吾輩が気にかけていたあの幼体が成長してついに正体を現した。毒人間だった。毒人間、成体しか見たことなかったから知らなかったけど、あの子、毒人間だった。
毒人間は何も本当に毒を持っているわけではない。ではなぜそう呼ばれるのか。それは毒人間が住むような場所はそれだけ人間の瘴気に満ちている=人間の侵略がそれだけ進んでいる証拠、といわれているからだ。なんたることだ。そんなものの成長を吾輩はぼんやり見守っていたというのか。
悲しい。
雨上がりの毒人間は幼体の頃の面影もなく、本当に毒を持っているかのように妖しく光っていた。
駆逐した。歯、食いしばりながら駆逐した。
ついに共存できる人間が現れたかと思っていたのに。所詮はまた夢物語と泡のように消えてしまった。
ゴム手袋はめてどんどん倒した。例の薬を使わなかったのは、それが一度は信じた奴らへの吾輩の礼儀であり別れの儀式だと思ったから。
吾輩の庇護を受けていた毒人間どもは、気が付けばずいぶんと繁殖し勢力を増していて、奴らを屠ると領地はだいぶすっきりした。きっとまた数日後には性懲りもなく、ここに新しい人間どもが住みはじめるのだろう。久々に疲れた。しもべ、相変わらず手伝わないし。腰ぐらい揉んでほしい。




