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吾輩日記  作者: 紀 ゾマ之
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除草剤の段

あまり気が進まなかったのだが、ついに人間対策に薬を買ってみた。

吾輩、これまでは打撃系で攻めてきたものの、奴らめが旺盛に繁殖しくさるのでそれじゃ追いつかなくなってきた。

なんなのだあの頭数、もうお薬の力を借りて効率よく特殊攻撃も混ぜていかないといよいよ我が領地が乗っ取られてしまう。

それにしてもね、すごい、ホームセンター。人間討伐関連のグッズが本当に充実している。

鎌みたいなポピュラーな対策グッズに関しては少し大きめの近所のスーパーにも売っているし、それだけどの魔王も人間に悩まされているということなのだが、ホームセンターの品ぞろえたるや、なんかもう「醤油きらしてた、あ、ついでに鎌も売ってるかな」みたいなライトな感覚ではなく、もう「絶殺!!」みたいな、もはや人間への怒りと憎悪を隠そうとしていないラインナップだ。

「撒くだけカンタン!人間を根こそぎ退治!」だとか「速攻!よく効く!あなたの領地を人間から守る!」だとか「プロ仕様!二度と人間の湧かない領地へ!」などと勇ましい文句が書かれたラベルを前に吾輩は途方に暮れた。

薬の種類が多い、というのもある。「!」の多用を見ているうちになんだか可笑しくなってきた、というのもある。しかし我が胸を一番占めていたのはこの期に及んでもまだ、できれば薬を使いたくないな、という思いだ。

吾輩も人間もみな平等なのだ。吾輩に奴らの心がわからぬように、奴らにもまた吾輩の心はわからぬ。それでも同じ大地に生き、やがては死ぬ、同じ命を持っている。吾輩は我が領地を守るために奴らを手にかけてきた。奴らもまた、どんなに同胞を失おうとも進撃をやめない。

かわいそうに、吾輩が呼び寄せたゴーレムたちは人間どもの襲撃に怯えて震えながら暮らしている。

狂い咲きのキメラの元にも恥知らずの人間どもの魔の手が迫っている。

同じ命をいとしく思う吾輩のこの慈悲を理解せず、領分を侵し続ける者どもよ、吾輩の苦渋の涙を知らぬ愚か者よ、吾輩はだからこの劇薬を貴様らに浴びせる。

奴らにだけ注ぐ呪いの雨だ。無味無臭で、人間どもには普通の雨と見分けがつけられまい。これを浴びた者はまず足をやられ、繁殖も成長も止まり、そこから徐々に命が枯れていく。こっわ。やはりこんな怖いの領地に撒きたくない。

いや、でも撒く。生きとし生けるものは皆平等だが、吾輩の守りたい命には順番がある。もうこれしかない。撒いてこます!


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