雨の段
雨だ。雨が降ると人間どもはますます図に乗る。
吾輩が城に籠っているのをいいことに、なにやらいつも以上に働いている様子だ。
実際に目にしたわけではないので憶測なのだが、雨上がりに見かける人間どもは輪をかけてでっかくなったり増えたりしている。野蛮な者どもめ、雨だというのに濡れるのも構わずに何をしているのだ。たぶんあいつら傘とか持ってないと思う。ていうか雨宿りの概念すらないと思う。城から覗き見るとそれくらい平気で濡れている。
しかしあの低能どもはわかっていない。
繊細な吾輩は雨の最中こそ城から出ることを厭うが、雨上がりこそもっとも力を発揮できるのだ。
一晩中雨に濡れて足腰の弱った奴らをここぞとばかりに駆逐してやろうではないか。
とはいえ実際には吾輩のパラメータに何らかの変化が起こるわけでもない。
肝は大地にある。雨上がりには、柔らかく湿った大地がその大いなる力をもって吾輩に服従し、人間どもの足元をすくってくれるのだ。そんなこともわからずに呆と立ち尽くし雨に濡れるままにしている奴らの愚かさよ。吾輩は天気予報を見る。ぐずつくお天気の続く昨今だが、今週末には晴れ間ものぞきそうだ。
見てろよ、人間。この長雨で思うさまでっかくなったりわさわさ増えたりしやがって。
我が城から遠い地で、静かにうずくまっていれば見逃す命であったものを。吾輩とて疲れのたまった週末をわざわざ貴様らの討伐に充てているのだ。本当は寝ていたいし、ラーメンだって食べに行きたいのに。貴様らがわさわさするから仕方がないのだ。この怨みを喰らうがよい、容赦なく引っこ抜いてくれる。




