EP4. 肉とハエ
――悪い予感が的中してしまった。
軍服を着た男は膝をつき、先ほどまで2体だった『それ』は今や6体めが生まれようとしている。
『『『 肉 』』』
『『『く ださぁい 』』』
6体で男を囲む。
やばい。やばいやばいやばいやばい――。
考えたくなかった最悪の状況ゆえに、無策で戻ってきてしまった俺は動けずにいた。
6体は仲良く分け合う気はないのか、男を取り合うように引っ張り合った。
「う...あぁぁぁぁ!」
男は文字通り張り裂けそうになりながら叫んだ。
もう助けは来ない。
男の叫び声にその現実を突きつけられた俺は、考えもなしに『それ』たちに石を投げつけた。
「...肉、ほしいか。」
――死の瞬間を目撃するだけの野次馬になるのはごめんだ。
すると『それ』たちは一斉にこちらに首を向け、満面の笑みを見せた。
『『『 オマエノ肉 』』』
『『『 く ださいィ 』』』
こちらに気を取られ男への拘束が緩んだ瞬間、男は6体の首をはねた。
「お兄さん!
助かった!でももう無理するな!」
一瞬の隙をつくっただけ――むしろ、その隙を突いて打破してくれなかったら無策の俺共々もうこの世にはいないので助けられたのはこちら――なのだが、なんとか一助となれたようだ。
「...やったのか?」
男に尋ねる。
「いや、こいつらはいわゆる核の部分を破壊しない限り、分裂して増殖するみたいだね。
だから核を探りながらやり合ってたんだけど――
今斬った首は核じゃない上にあと数秒でこの6体分の死体が倍になって元気に襲ってくるから最悪の時間稼ぎってとこかな。
でも、僕1人だとあのまま死んでた上に、隙は一瞬だったから今はこうするほかなかったよ。助けてくれてありがと、お兄さん。」
一息つく暇もなく、『それ』たちは増殖を始めた。
「これからどうする?」
「今まで切ったところは首、頭、心臓、腹...それから――タマキン...!
次は手足で試すかな。」
――命の根競べのような戦い方だ、しかも両断してしまう刀と『それ』の特性との相性が悪い。
だがそれ以上の提案できるアイデアもない。
作戦会議できる暇もなく、倍の元気を取り戻した『それ』たち12体は一斉にこちらへ向かってきた。
「お兄さん下がってて!」
男は刀を構える。そして、向かってくる一番手前の『それ』を迎え撃つように斬る動作をとった。
刀は空を切った。
斬られたはずの『それ』は軽く身を躱し男を跳ね飛ばしていた。
今までになかったであろうその行動パターンの意味にハッとした男は宙に浮きながら叫ぶ。
「狙いはお前だ――ッ!逃げろッ!!」
男が跳ね飛ばされた先には『それ』がいた。
空中でふわりと放物線の軌道を描きながら飛ばされた男の頭を、
『それ』はまるで飛んできたハエを処理するように、ぐしゃっと両手で叩き潰した。
――今度こそ、死ぬ。
全速力でタックルしてくる巨体の、1トンは軽く超えたであろう衝撃に俺の体は五体を維持できなかった。




