EP2. 肉ください
やばい。
何あれ?
すっごいデカい。横幅も縦幅も。
ギリギリ人間のカタチを保っている大きな球体のような全裸の
頭つんつるてん男が路肩に立ちこちらを見つめて、
にたにたしながら歯をカチ、カチ、と鳴らしている。
しかも、それがうつろに吐き出す言葉はなんとなく覚えがある。
『 肉 ください 。』
オカルト掲示板の退屈なスレッドの1つがよぎった。
「アレ、マジなのかよ…」
リアリティのないホラ話だと思っていたがマジだった。
最寄駅とも、自宅のある住宅街の方面とも、中途半端に遠い位置にあるコンビニへの道なだけあって、
あたりに人の気配はない。
街灯がうっすらそれを照らしている。
「『あげません』って言ったら絶対にダメなんだよな…。いや、違う、それは俺がテキトーにレスしようとした内容だ…。」
頭の中が真っ白になり働かない。
あいつと遭遇したときの正解は何だ。
というか10mは離れた距離からも伝わる「近寄ってはいけない」雰囲気のそれと、
あのスレの主はすれ違えたのか。どういう胆力だ。
早くこの場を離れないとという感情とは裏腹に
前にも後ろにも体は動かなかった。
むしろ少しでも足を動かしてしまうとバランスを崩してしまいそうなくらい、
ようやく立っているという感覚だった。
体感、5分にも10分にも感じられた短い時間を経て
「それ」は動き出した。
『 肉 みつけタぁ!』
それのこちらに向かってくる動きは獲物を狩るハンターというよりはるかに無垢で、
ただママに「ごはんよ」と言われた子どものようだった。
死ぬ。
そう思うと同時―もしくは、それより少し後に、つんつるてんの頭が球体から離れ地面にたたきつけられた。
俺の目の前に、刀を持ち、黒い軍服を着た出で立ちの若い男が立っていた。
「君、大丈夫?
というか、霊感持ってたりする?」
茶髪のチャラチャラした雰囲気の男に、これほどまでに抱かれてもいいと思ったのはこれが初めてだ。




