↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第1章完結】 婚期逃したので侍女として働いています。え⁉︎ 地味な私が歳下の公爵令息に溺愛されるんですか⁉︎  作者: 水月華
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/58

56.初恋

「そ、うでしたか。え、っと」


 もう何を言えばいいか分からない。ずっと混乱しっぱなしだ。

 

「少しは手ごたえがあっただろうか、と考えていたら、次の日にはジェインが体調を崩したと言われるし、マティルダには叱られるし。自分のせいかと落ち込んでしまってな」


 うん、私の視点とエドワード様の視点で、大分差異があるな。

 

「そんなことがあれば、しばらくは近づくのも良くないかと思って、散歩していたら外で昼寝しているジェインを見つけた」

「え?」


 何の話だ? 昼寝?


 少し考えて、ハッと気が付いた。


「もしかして森で寝ていた時のことですか?」

「ああ。まさかそんなところにいるとは思わなくて、驚いた。本当に顔色が悪いし、心配したんだ」


 そんな姿を見られていたのか。恥ずかしい。


「だからジェインと仲のいいヴァイオレットに、場所だけ教えておいた」

「えっ。ヴァオイレットはそんなこと一言も……」

「気を遣ってくれたんだろう。ヴァイオレットの有能ぶりも、相当だからな」

「そうなんですね……」


 ヴァイオレットは、私達4人の中でも一番の古株だ。リーダー的立ち位置にもなっているし、有能なのは当然だ。


「いや、今はいい。それから方法を少し変えたのに、全くジェインには響いていなかったんだな。リリーがいた時も、好感触だったと思ったのに」

「あれはリリーにバレたくなくて、焦っていたんです」

「その割には俺を称賛してくれてたな」


 あれはパニック状態だったからだ。


 いや、パニックになって相手を称賛するってどういうことだ。


 けれどあの時は、思ったことを何も考えずに口に出していたと思う。


「それにリリーのことを考えれば、エドワード様を貶すなんて考えられません。あの子は——」

「俺を慕ってくれていたな」

「……知ってたんですか」


 ということはリリーの気持ちを知っていて、私をリリーの目の前で口説こうとしていたと。


 そこだけみると、ちょっと酷いと思ってしまう。リリーは大切な後輩だから、余計に。

 

「まあな。言っただろう? 1年ほど前からジェインを気にかけていたと。たまにあるパーティーにジェインが仕事を担当すると聞いて、やっと近づくチャンスが来たと思ったら、リリーがいたんだ。何回か続けば察する」


 私を探す過程で、リリーを知ったのか。確かにそれは、リリーの気持ちを察してもおかしくない。


「避けていたわけではありません。リリーの淡い想いを、少しでも応援したいと思っていたのです」

「へえ」

「本人は自分の立場をわきまえていますから、大きな行動を起こしませんでした。そのいじらしさも相まって、皆で協力していましたよ」


 もしこれが、調子に乗るような性格だったら、皆協力なんてしない。


 リリーだから皆、協力したのだ。


「で、ようやく俺の成人祝いのパーティーで、ジェインに近づくチャンスができたからな。そこからは結構必死だったんだぞ?」

「ええ。数日おきに私のところに来るので、とても怖かったです」


 私の言葉に、エドワード様は意外そうな顔をする。

 

「怖かったのか?」

「……女の嫉妬は怖いんですよ」


 エドワード様、ぎりぎり目立たないようにしてくれたからいいけれど、見つかっていたらどうなっていたか。


 どちらにせよ、これから嫉妬の視線は飽きるほどに来るだろう。ああ、それは耐えられるか、不安だ。


「まあうちの使用人は大丈夫だろう。あの3人が守ってくれるだろうしな」

「……そう、ですかね」


 3人のことは信頼しているけれど、それとこれとは別だ。


 ……うん、ヴァイオレットとオリーヴは大丈夫。問題はリリーか。


 時々荒れていたし、その件で一時期関係がぎこちなくなった。


「ああ。何せ、この帰省の期間中に母上から、3人にはそれとなく伝えるそうだからな」

「えええ⁉」


 ということは既に伝わっている!?


 それよりも。


「私が断ったら、どうするつもりだったんですか⁉」

「好感触だったから、大丈夫だと思っていた」


 えええ。なにそのゴリ押し感。


 結果的には問題ないけれど、危ない橋を渡りすぎじゃない?


「まあ、おかげで俺も焦っていたがな」

「そ、そうでしょうね」


 結構エドワード様的には、色々下準備して私を落とそうとしていたのか。


 いや、から回っている感もあるけれど。それはある意味、年相応と考えたらかわいらしいものだった。


「エドワード様って、結構年相応なところもありますよね」

「……当然だろう。初恋だからな」

「っ⁉ え⁉ 初恋!? 私が⁉」


 ありえない、と思ってしまった。だって、エドワード様なら幼少期から、様々な令嬢と関わっているはずだ。


 なのに、その見た目麗しいはずの令嬢たちを差し置いて、私が初恋⁉


「嘘でしょう⁉ だって、そう! フォークナー公爵令嬢は⁉」

「なぜそこでアデレイド嬢が出てくる? 彼女は物心ついた時からリチャードの婚約者だから、そもそもそういう目で見ていない!」


 そうだった。良識ある人間なら、婚約者のいる相手に横槍をいれるような真似はしないだろう。


「え? ですが他にも学園とかパーティーでいいなって思う令嬢はいなかったんですが⁉」

「いなかったな」

「……エドワード様、それはさすがに趣味が……」


 初恋が私って。趣味が悪いとしか言えないんじゃないだろうか。


「ジェインは本当に、自己肯定感が低いな。自分が思っている以上に、君は綺麗だよ」

「いやぁ。それはちょっと」


 それはもう、あり得ない。本当に。


 私の表情を見て、エドワード様はため息を吐いた。


「まあ。この問題は追々な。すぐに変えれるものでもないし」

「は、はあ」


 よし、とエドワード様は気合を入れるように、膝を叩いた。


「遅くなってきたし、今日はここまでだな」

「あ、はい。あの……おやすみなさい」


 少し名残惜しいけれど、まだ旅は続くんだ。体力は少しでも回復させておかないと。


 エドワード様を見送ろうと、ベッドから降りようとするが、エドワード様に手を取られて動けなくなってしまう。


「ああ。おやすみ、ジェイン。……明日から、楽しみだ」


 そう言って、手の甲に唇が落とされる。


「っ⁉」

「ゆっくり休んでくれ。……今日はありがとう」


 そう言って、エドワード様は部屋から出て行った。


 扉が閉まってからも、私はしばらく動けなかった。


 何なら手も、エドワード様に引かれた体勢のままだ。


 ぷしゅう、と頭から湯気が出ているのではないかという、錯覚に陥る。


「あれは反則だぁ……」


 その日の夜は、当然のように眠ることができなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。