↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第1章完結】 婚期逃したので侍女として働いています。え⁉︎ 地味な私が歳下の公爵令息に溺愛されるんですか⁉︎  作者: 水月華
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/58

49.認めたくない

 貴族の結婚は、大前提として家の存続のために行われる。


 それこそ、リチャード皇太子殿下とアデレイト様が最たる例だ。あの二人は物心つく前に婚約が決まった。


 けれどお互いに思いやっているからこそ、上手く関係を築けているのだろう。それは、あの時のパーティーでのダンスを見ただけでも分かった。

 

 きっと皇太子殿下とアデレイド様は、お互い好きあっているのだと思う。


 実際、相思相愛だという噂は流れてきている。

 

 政略結婚に恋は必要ないとはいえ、お互いに敬意を持つことは大事だ。


 だから恋愛が絡むことを否定しない。


 それでも高位貴族になればなるほど、家のための結婚の意味は大きくなるのだ。


 どんなに相手を好きでいても、家柄と合わなければ認められないことも過去にはあったらしい。


 閑話休題(話が逸れた)


 私の好きな人。それは友情ではない、別の“好き”。


 ジュリアの言っている意味は分かる。けれどそれ以上を理解することを、心が拒む。


 だってそれは——。


 考え込む私の手が、ふと温かくなる。


 見るとジュリアが私の手を包み込んでいた。


 いつの間にか、ジュリアは悲し気な表情に変わっていた。


「お姉様、お願い。そ(・)れ(・)を拒まないで。お姉様がやりたいことがあって、選んだ道に進むのはいいの。けれど否定はしないで」


 それはお母様にも言われたことだ。


「……そんなにわかりやすい?」


 ぽつりと零れた言葉は、私の心からの問いかけ。


 自分でも何を拒否しているのか、理解できない——いやしないようにしているのに。


 それを力づくで引きはがそうとしてくる。


「私が心から、お姉様の幸せを考えているからだよ。じゃなきゃ、ここまで分からない」

「……そっか。ジュリアもすっかり淑女だね。私なんて、どんどんおいていかれているような感じだな」


 エドワード様も然り。情けないなぁ。


「お姉様は過小評価しすぎなの。もっと自分を客観的に見ないと、卑下する癖は治らないよ。お姉様は自分が思っている以上に、しっかりしているもの」

「そうかな」

「そうなの」


 力強く言われて、ふっと笑ってしまう。


 敵わないなぁ。人間として、ジュリアの方がよっぽど成熟している。これじゃあどっちが姉か分からない。


 私の様子を見て安心した様子で、ジュリアは立ち上がった。


「それじゃあ私、エドワード様と話してくるね」

「え」


 突然のことに、間の抜けた声が漏れる。

 

「大丈夫、喝をいれてくるだけだから」

「それ、なにも大丈夫じゃないよ!」

「エドワード様のためになるから、大丈夫よ」


 とても心配だ。心配しかない。


 というかジュリアと話をしにきたのに、どうしてエドワード様に喝を入れることになったのか。


「悪いことにはならないわ。それは断言できる。……これは私からのお詫びよ。私が慕っている人がいるともっと早くに言っていれば、また違った結果になったはずだもの」

「でも……」

「エドワード様もお姉様も、明日には帰るのでしょう? 今話さないと機会は無いわ! というわけでこれは決定事項!」

「あ、ジュリア!」


 そこまで言うと、ジュリア強引に部屋を出て行ってしまった。


 止める間もない素早さだった。ジュリアはそんなに忙しなく動くことはしなさそうなのに、身軽に動けるのがすごい。


「……」


 部屋の主人がいないのに、ずっといるのも忍びなくて、自分の部屋へ向かう。


 その間走馬灯のように、過去の出来事が私の中を駆け巡っていた。


 エドワード様と関わるようになってからの日々を。


 本当はわかっていた。自分で言うのもなんだけれど、私はそこまで愚鈍ではない。


 ただ認めようとしなかった。


 気のせいだ、ありえない。そんな言葉を使って考えないようにしていた。とどのつまり、ただの現実逃避だ。


「だって、そうじゃない。……年下に恋焦がれるなんて」


 シャングリラ皇国の一般的な感覚では、女性が年下に嫁ぐなどあり得ないことだ。


 それに加えて、私は結婚適齢期を過ぎた行き遅れ。貴族社会でプラスに捉えられることなど、まず持ってあり得ない。


 そしてこの場合、批判は私だけでなくエドワード様にも向くことになる。


 それは絶対にダメだ。


 エドワード様は将来、間違いなく国の重鎮となるだろう。


 公爵家の嫡男で、リチャード皇太子殿下とも仲が良いとなれば、重鎮にならない理由もない。


 ならば結婚相手もエドワード様に相応しい、完璧な淑女であるべきだ。


 私は相応しくない。エドワード様の隣に立つべきは、私ではない。


「……ジュリアがああ言っていたのなら、状況的に導き出せる答えは、一つだよね」


 誰に聞かせるわけでもなく、ひとりごつ。


 エドワード様はジュリアに告白したわけではない。ならばあれは恋愛相談をしていたということなのだろう。


 確かにその方が、今までの会話の流れに合っている。

.

 思い込みもあったけれど、認めたくない、認めてはいけないという気持ちが強かったせいだ。皆、私に気づかせようとしていたけれど、それでも認めようとはしなかった。


 とはいえ認めたくないがあまり、エドワード様の地雷を踏み抜いたのはさすがに反省している。どの口がではあるが、傷つけたいと思ってしたわけではない。


 それこそ、年上としてもう少しスマートに躱せたらよかったのに、上手くいかない。

 

 でもそれで諦めてくれたら良かったのに。


「そう思うなら、ジュリアを止めなさいって話だけれどね」


 結局、止めない時点で私も……。


 その日、エドワード様が私の部屋を訪ねてくることはなかった。



 ◇◇◇



 次の日。朝食を終えると、私達は帰宅の途につくことになった。


 遅くとも午前中には出発しないと、次の宿に間に合わない可能性もあるからだ。


 忘れ物がないか最終確認をしたあと、荷物を持ってエントランスへ向かう。


 見送りのために、家族が揃っていた。エドワード様はまだきていないようだ。


「ジュリア、気をつけてな」

「ありがとう。お兄様」


 お兄様は色々言いたいこと——主にエドワード様のことだろう——があるようだけれど、それを飲み込んでいた。


 代わりにジュリアが口を開く。


「お姉様、昨日は大丈夫だったわ。だから、心配しないでね」

「……うん、ありがとう」


 朝食の時のエドワード様の様子からも察してはいたけれど。


 私としては心配でしかない。


 感情で動いて後悔するのはもう沢山なのだ。


 あくまで合理的に動きたい。


 エドワード様が、それで納得してくれたらいいんだけどな。


 なんて考えていると、エドワードがやってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。