45.重い空気
体調崩していたので投稿遅れました
すいません
大人しく自室へ戻り、お兄様たちが何とかしてくれることを祈る。
それしかできないほど、私の頭の中は混乱しっぱなしだった。
エドワード様はジュリアを好いていると思ったし、ジュリアもまた同じ気持ちだと信じて疑わなかった。
けれど実際はジュリアは別に慕っている方がいるという。
ならばこの数日間は何だったのだろう。
ジュリアの性格的に、好んだ相手がいるのに他の殿方を手玉に取ろうとはしないはず。
けれどじゃあなぜエドワード様とデートスポットに行ったのか。
途中でジュリアがいなくなってしまったので、明確な答えを得られなかった。
というかジュリア大丈夫かな。とてもショックを受けていた。
それにエドワード様も。
これから、どうなるんだろう。私、フォーサイス公爵家に帰っていいのかな。
お兄様はああ言ってくれたけれど、やはり諸悪の根源は私なのだろう。
じゃないとここまで大事にならないと思う。
ため息をついても、未来への不安は消えない。
何か動かないと、猛烈な不安に襲われる。けれど自室から出れば、ジュリアやエドワード様に鉢合わせた時、合わせる顔がない。
それを考えれば、動けなくなってしまうのは当然のことだった。
結局悶々としたまま、夕食時になった。自室で取った方がいいかなと思っていたけれど、お兄様が迎えに来る。
「ジェイン、夕食の時間だ」
「……お兄様、私がそちらへ行っては……」
「その、ジュリアもエドワード様も自室で食べると言っていてね。それに父上も母上も、ジュリアと話がしたいんだ。来てくれると嬉しい」
「……分かりました」
私のせいで2人にそんなことをさせてしまい、とても申し訳なくなった。
気持ちが沈むのを感じながら、食堂へ向かう。
お父様とお母様は、すでに席について待っていた。
「ジェイン、座りなさい」
「……はい」
お父様の声がいつもより硬い。これからのことを考えて、動きづらい体を無理やり動かす。
席につくと、お母様がたしなめるように言った。
「レイモンド。その言い方では、これからお説教が始まるようよ」
「む」
「大丈夫よ、ジェイン。まあ、全てが大丈夫ではないけれど」
「……は、はあ」
それは大丈夫と言えないのではないだろうか。そう思ったけれど、軽口を叩ける雰囲気ではなくて、曖昧に返事をする。
食事が運ばれてきたけれど、味わえる余裕はなさそうだ。
「……冷めると食事が楽しめないな。食べながら話そう」
「はい」
「そうね」
お父様の言葉に、お兄様とお母様が返事をして、カトラリーを持つ。
私も習うように手を伸ばした。
静かな食事の時間。聞こえるのはかすかに食器とカトラリーがぶつかる音だけ。
うん、こんな状態では楽しめるわけがなかった。味が全く分からない。
お父様にチラリと視線を向けると、こちらを見ていたようで目が合ってしまった。
「……ジェイン」
「はい」
「そうだな、どこから話せばいいか」
そうして黙り込んでしまう。話そうとしたけれど、言葉が出てこないのかもしれない。
「レイモンド、ここはわたくしに任せていただけるかしら。貴方は当主として、動いて欲しいの」
「サンドラ……すまない。頼む。ジェイン、とにかく私はアトウッド伯爵家当主としても、父親としてもお前の幸せを願っている。……今回のことはお前のせいではない。それは頭に入れてほしい」
「……はい」
何と答えればいいか分からず、小さな声で返事をした。
その様子をみて、お母様は微笑みながら言う。
「まさかジェインが、わたくしの質問の意図をはき違えていたとは思わなかったわ。もっとしっかり聞けばよかったわね」
「え?」
「ほら、エドワード様のことをどう思っているか、聞いたの覚えているかしら?」
「あ、はい」
「その時、ちゃんと聞いておけば、こんなことにはならなかったと思うの」
お母様も少なからず責任を感じているということだろうか。
「まあ、どこから話すか、というのは難しいわね。ジェイン、親に話すのは嫌なこともあると思うわ。だからわたくしの質問に全て答えなくていいの。けれどいくつか質問させてちょうだい」
「はい」
「ジェフサからも聞いているけれど、ジェインはこのままフォーサイス公爵家で働きたいということでいいのかしら?」
「はい。そうです」
お母様は食事をしながら、ゆっくり話始める。その余裕に、私も心が落ち着いて同じように食べ始める。
「ふふ。そうなのね。働いていて、楽しい?」
「はい。同僚も良い人たちばかりで、とても充実しています」
「わたくしも、料理の楽しさを知ったからなんとなく、ジェインの気持ちはわかるわ」
それは私もお母様に思ったことだ。
「けれど伯爵家の夫人として、料理ばかりをしているわけにはいかない。領民のため、当主を支えるために、わたくしは伯爵夫人の役割を全うしなければならない」
「はい」
「わたくしはね、人には役割が必要だと思うの。特に貴女の幸せを願うあまり、縛り付けてしまったときに思ったわ。ジェインから役割を取り上げてしまって、貴女がどう思うか考えもしなかった」
「……」
あの頃の話を始めるお母様に、少し驚いてしまう。
私が強引に就職を決めたあと、帰省してもその時の話はタブーであるかのように、ほとんど話題にならなかった。
私にいいご縁がないか、直接聞いてこなかったのもそういうことがあったからだと思う。
「そしてそれが原因で、ジェインの心に消えない傷をつけてしまった。今回のことは、アトウッド伯爵家の問題でもあると思うの」
お母様の表情は、辛そうだけれど表に出さないようにしているような複雑なものだった。
「ジェインが心から侍女を続けたいというのは、とても素晴らしいことだわ。けれどね、どうかそれに囚われないで。別に違う道に進んでもいいのよ」
「えっと、はい」
違う道とはどういう道だろう。
お母様の言っている意味は理解できるはずなのに、それ以上考えようとすると急に頭の中に靄がかかって分からなくなる。
そんな私の様子を見て、私も分からない内面の私がお母様には見えたのだろうか。
「……難しいことよね。今の状態だと。だからね、ジェイン。少しずつでいいから、素直になって。自分の心の声を聴く習慣をつけてほしいわ」
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