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【第1章完結】 婚期逃したので侍女として働いています。え⁉︎ 地味な私が歳下の公爵令息に溺愛されるんですか⁉︎  作者: 水月華
第1章

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44.衝撃の事実

「ジェイン、違うんだ。さっきの話は」


 お兄様も声が震えている。


 なんだか取り返しのつかないことをしてしまったような言い方だ。


 今までの状態からなぜそうなるのか理解できない。


 ここはもうハッピーエンドという状態ではないのか。


「お兄様?」

「エドワード殿は……」


 そこで言葉を区切ってしまう。何度か口を開いたり閉じたりしているけれど、ジュリアに腕を掴まれてついに口を閉ざした。


「……すまない」

「どうしてお兄様が謝るの?」

「……もっとうまく立ち回ればよかった。そうしたらこうはならなかったのに」


 どういうことだろう。


「今回のことは、根本的な原因は俺たちのせいだ。それにジェインも……きっと同じ思いだと思ったから問題ないと思っていたんだ」

「同じ思い……?」

「お兄様、それは……」


 ジュリアがお兄様を止めようとしている。


 けれどお兄様は、首を振った」


「ジュリア。確かにそうだ。俺たちは余計なことをするなと言われていた。だから静観していたが、こうなるともう、他者の手が必要だと思うんだ」

「……お兄様の言うことも一理あります。けれど、これからを考えるのなら、エドワード様に頑張っていただきたいと、思ってしまいます」


 ジュリアの言葉に、お兄様は口を閉ざす。


 私だけが蚊帳の外に置かれてしまい、これからどうなるのかさっぱり分からない。


「お姉様」

「は、はい」


 急にジュリアが、こちらを向いた。その目は先ほどの弱々しさが消えて、とても力強く輝いている。


「エドワード様とお話してください。とにかく、先入観は捨てて、ありのままの自分を話してください」

「ありのままって……」


 とても難しい注文だと思ってしまう。


 何度もエドワード様には、情けない姿を見せていることもあって、これ以上そのような姿を見せたくない。


「あと、根本的なことを言っておきますが、私お慕いしている方はいますが、それはエドワード様ではありません」

「……へ!?」


 とんでもない爆弾が落とされて、大きな声を出してしまう。


「まだアトウッド伯爵家は安定していないので、婚約話まではしていません。ですが相手も前向きに考えてくれています」

「だ、だれっ!? エドワード様より、素敵な方だということ!?」

「私からすれば、そういうことになりますね。……え? お姉様、それで無自覚なの?」


 途中からジュリアが、驚いた表情になる。


 けれど私はそれを気にする余裕はなかった。


「だ、だって、帰省した時、ジュリア喜んでたじゃない! 話の内容的に、ジュリアに縁談の申し込みがきたのではないの!?」

「あぁ。もしかしてそこから……」


 ジュリアは困ったように眉を寄せている。


 黙ったままのお兄様はというと、頭を抱えて座り込んでしまった。


「しまった。そこから勘違いが始まっていたのか……いや、やはりこれは俺たちのせいでもあるだろう」


 ぶつぶつ言っているお兄様は今は放っておく。なにせジュリアには、もう一つ確認しないといけないことがあるのだ。


「そ、それに私、聞いたよ! ジュリアとエドワード様が、アッシュリッジ公園に出かけたって。あそこは有名なデートスポットじゃない! なのに違うの!?」

「あの話を聞いていたのに!?」


 先ほどまで冷静だったジュリアが、焦ったような声を上げる。


「そうだよ! たまたま聞いちゃったの! 2人で内緒で出かけるところを!」

「だったらなんで、そんな勘違いを!?」


 ジュリアの言葉に、私は強めに返す。感情が荒ぶって、お互いヒートアップしつつあるのだ。


「二人とも落ち着くんだ。ジェイン、いったいどこから話を聞いていたんだ?」


 うずくまっていたお兄様が、私達の間に入る。


 私達より冷静な声に、私も少しだけ冷静さを取り戻した。


「えっと、エドワード様が『ジュリア嬢がついてくれるなら心強いな』っておっしゃって、ジュリアが『そういっていただけて嬉しいです』って言ったところだけど」

「なんでそんな中途半端なの!? 聞くならもっと、初めから聞いて!?」


 私の言葉に、今度はジュリアが崩れ落ちた。


「え? えっと、ごめんなさい」


 思わず謝るけれど、ジュリアは私の謝罪が耳に入らなかったようだ。


 ジュリアはブツブツと呟いている。そのあまりの変容に、何かの危機が訪れているようだった。


「そんなぁ……。この部分だけだったら、本当にお姉様の言う通りじゃない。私がもっと言動に気を付けていたら……」

「じゅ、ジュリア?」

「私、わたしぃ……とんだ泥棒猫もどきだわあああ!」

「ジュリアあああ!?」


 その言葉と共に、凄い勢いでジュリアは去ってしまった。


 後を追うこともできない、それくらいの勢いだった。


 助けを求めるように、お兄様を見るとお兄様もうなだれている。


「……俺、父上と母上にもこのこと話してくるよ。……ジェイン。きっとこれは誰(・)も(・)悪(・)く(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)。そうだろう?」

「そ、そうかな。私が——」

「そう考えると、きっと全員自分自身を責める。な、そういうことにしよう」

「は、はい」


 お兄様の勢いに気圧された。お兄様はきっと、私を責めたいとかではないのだろう。

 

「……本当はエドワード殿と話してほしいところだが、今話すのは余計にこじれるだろう。だからジェインは部屋にいるといい。俺たちにできることはそのこじれを緩めることだ」

「お兄様……」

「ジェイン、すまな——いや、違うな。いったん俺たちに任せてくれ」

「わかりました……」


 きっと謝罪しようとしたことからも、お兄様も自分が悪いと思ってはいるのだろう。


 けれどジュリアのため、そして……私のためにも“誰も悪くない”と言っているのだ。


 それに気づいて、私は頷くことしかできなかった。

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