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婚期逃したので侍女として働いています。え⁉︎ 地味な私が歳下の公爵令息に溺愛されるんですか⁉︎  作者: 水月華


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25.突然の提案

 マティルダさんの言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。


「え? 何故私ですか? どう考えても、私では力不足です」

「ジェイン、ここにきて何年?」

「2年です」


 どうして今、それを聞かれた?


 不思議に思いつつ答えると、マティルダさんは頷いた。


「ええ。そろそろ仕事を増やしても良いかと思ったの。エドワード様の成人のお祝いで、働きを評価されたということよ」

「そ、それはありがたいですが、いきなりお客様をもてなすというのは……」

「奥様も許可されているわ。私も付くから、大丈夫よ」


 そこまで言われて、断れるわけもない。


 それにマティルダさんが付いてくれるのなら、これ以上心強いことはないだろう。


 だからといって、緊張しないなんて無理だけれど。


「わ、分かりました。未熟ですが、精一杯頑張ります……」


 その時頭を下げた私は、マティルダさんがホッとした表情をしたことに気が付かなかった。



 ◇◇◇



 まずお茶会が始まる前に、奥様に挨拶する。


「奥様。本日はこのジェインも付かせていただきます」

「よろしくお願いいたします」

「ええ、よろしくね。ジェインさん」


 にこやかに笑うステファニー様は、今日もとても美しい。


 藍色の髪は本日は、シンプルにまとめられている。紫の瞳は、初めて会った時と同じように優しい光をたたえていた。


 その優しい雰囲気のお陰で、緊張していた体から自然と力が抜ける。


 気品や威厳はありながらも、親しみやすさを感じるのはとてもすごい事だと思う。


 まだお客様が来るまで時間があるようなので、マティルダさんから流れを説明される。


「ジェインもある程度は分かっているかもしれないけれど、改めて説明しておくわね。お客様を出迎えたら、お茶は私たちが淹れます。淹れたらある程度距離を置きます。これは、奥様とお客様の話が聞き取れないくらいの距離を取るのです。まあ、時と場合によってはそばにいることもあるけれど、それは追々学んでいけば良いでしょう」

「はい」

「奥様がこちらに視線を向けたら、用事があるということだから、すぐに近づいてください。基本的に、お茶を淹れたり、お茶菓子を補充するくらいだからそこまで気を張らなくても大丈夫です。貴女は基礎がしっかりしているから、どこを気をつけるべきか、分かっているでしょう」

「大丈夫です」


 ここは昔も思い浮かべながら答える。


 伯爵家だらうが公爵家だろうが、基本は変わらないのだ。こういう時は高位貴族で良かったと思う。


 一通り説明を受けて、そろそろお客様が来る時間になった。


 出迎えも侍女の仕事ではあるが、今日は別の侍女が出迎えるらしい。


 私はまた緊張が高まるのを感じながら、お客様が来るのを待つ。


 やがて、サロンの扉が開き、お客様が入って来た。


 深々と頭を下げて、出迎える。


「あら、とても様になっているわ。さすがね、ジェイン」

「え?」


 聞き覚えのある声だけれど、許可がないので顔は下げたままだ。それでも声は出てしまったのは、減点ポイントだろう。


 少し揶揄うような声音で、ステファニー様が言う。


「まあ。わたくしへの挨拶より先に侍女に話しかけるなんて。妬けますわね」

「失礼しました。ご機嫌よう。ステファニー様は、今日もお美しいですわ」

「あら、ありがとうございます。クレメンス様も素敵ですわ」


 社交辞令を交わす2人に、ドキドキと胸が高鳴る。


 先ほど思い浮かべたばかりの人が目の前にいるなんて。


 わざわざマティルダさんが私を呼んだということに、今更ながら何らかしらの意図を感じる。


「さあ、顔を上げて。お茶をいただけるかしら?」

「は、はい」


 許可が下りたので顔を上げると、ここ最近は手紙のやり取りだけだったクレメンスが立っていた。


 明らかに私に言っていたけれど、私は流れの説明を受けただけでお茶の淹れ方は教わっていない。


 ちらりとマティルダさんに視線を送ると、マティルダさんは私を安心させるように微笑んだ。


「申し訳ございません。ヒューイット侯爵夫人。まだこの侍女はお茶を淹れたことがなく。よろしければ、私が淹れてもよろしいでしょうか?」

「そうなの? 仕方ないわね」

「ありがとうございます」


 急に無茶ぶりをされたけれど、マティルダさんのおかげで回避できた。


 クレメンスは笑いながら、ステファニー様に向き直る。


「もうジェインは侍女の中でも、それなりの地位にいるかと思っていたのですわ」

「ふふ。さすがにそれは、どんなエリートでも難しいのはクレメンス様もご存じでしょう?」

「そうですわね。けれど流石はフォーサイス公爵家の侍女ですわ。わたくしの家の侍女も自慢だけれど、それでも()()()()負けましたわ。ステファニー様の手腕の高さが窺えますわ」

「あら、お褒めの言葉をありがとうございます」


 ……おお、クレメンスが本当に侯爵夫人だ。


 なにせ私は親友としてのクレメンスしか知らない。こんなにも気品あふれる姿を、初めて見た気がする。


 感心してしまうが、今は私は仕事中。クレメンスから意識を外し、マティルダさんの動きを見る。


 やはり私が見様見真似でエドワード様にお茶を淹れた時と比べれば、どれほど私のお茶の淹れ方が拙かった自覚する。


 後でコツなど聞きたいけれど、今後そんな機会があるのかは分からない。いや、先ほどの会話を思えば、きっと機会はあるだろう。その時に積極的に聞こう。


 マティルダさんがお茶をカップに注いで、2人の目の前に置く。


 これでお茶会がスタートすると思ったけれど、クレメンスとステファニー様が同時に私を見た。


「それじゃあ、ジェインさんも座ってちょうだい」

「3人でお話しましょ」

「……はい!?」


 まさか、最初からこれが目的で……!?


 思わずマティルダさんを見ると、どこから用意したのか、椅子をもう一つ持ってきていたことで、疑問は確信へと変わったのだった。

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