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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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8

「……フェリカは?」

「え?」 

「フェリカは、王になりたいって思ったこと、ないの?」


 まっすぐに見つめられ、一瞬フェリカは言葉に詰まる。

 ほんの少しコトネが首をかしげるのを見て、


「──ない、と言ったら、嘘になるわね」


 苦笑交じりに、そう答える。

 

「フェリカも、すごくいい王様になれると思う。だって、いろんなことを知ってるし、優しいし」

「ふふ、ありがとう」


 そう言って笑うものの、その笑みはどこか静かだった。

 不思議そうに見つめるコトネに、


「でも、国には今の形があるでしょう?」


 夕暮れの街を見つめるフェリカ。


「姉はとても良い王だわ。人々も慕っているし、この国だって今とても安定しているもの」


 だから──、と。

 小さく続きかけた言葉は、最後まで形にならなかった。


 ***


 迎えの馬車を待っていると、ふわりと良い香りが漂って来て、コトネは思わず辺りを見回してしまう。

 どうやら少し先の大衆居酒屋から来ているらしい。

 大きな看板の下には屋台が出ていて、そこで買って好きな席で食事ができるようだ。

 仕事帰りなのだろう、荷物を肩から下げた人たちが、もくもくと煙を上げる鉄板の前に並んでいる。

 皆楽しそうに談笑していて、待ちながら麦酒を飲み、順番が来れば手渡された串料理をうまそうに頬張る。


 その様子や、立ち上る香り、音に食欲と興味をそそられたのだろう、


「ねえ、フェリカ。あれはなに?」


 尋ねるコトネの腹が小さくなるのを聞き、くすくす笑いながらフェリカが答える。


「たくさん歩いたもの、おなかがすくわよね。あれはスパイスに漬け込んだ肉を、香味野菜で挟んで焼いた料理よ。とてもおいしいの」

「……食べてみたいな」

「そうよね、あんなに良い香りがするんだもの、食べたくなるわ。でも……今日は食事係が準備してくれているから」

 

 そっか、とほんの少し未練を残しつつ頷くコトネに、フェリカが続ける。


「今日は、たっぷりの野菜と豆をスパイスで煮込んだスープに、ひき肉やトマトのソースを小麦の生地で包んだ焼き物、それから──」


 ひとつひとつ丁寧に説明され、そんなに!? と目を丸くするコトネ。


「そうそう、デザートはベリーをあしらったチーズのケーキだったわね。食後の紅茶と一緒にいただきましょう?」

「……そんなの聞いたら、楽しみでますますおなかがすいちゃうよ」

「ふふ、食事係が喜ぶわ」

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