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「……フェリカは?」
「え?」
「フェリカは、王になりたいって思ったこと、ないの?」
まっすぐに見つめられ、一瞬フェリカは言葉に詰まる。
ほんの少しコトネが首をかしげるのを見て、
「──ない、と言ったら、嘘になるわね」
苦笑交じりに、そう答える。
「フェリカも、すごくいい王様になれると思う。だって、いろんなことを知ってるし、優しいし」
「ふふ、ありがとう」
そう言って笑うものの、その笑みはどこか静かだった。
不思議そうに見つめるコトネに、
「でも、国には今の形があるでしょう?」
夕暮れの街を見つめるフェリカ。
「姉はとても良い王だわ。人々も慕っているし、この国だって今とても安定しているもの」
だから──、と。
小さく続きかけた言葉は、最後まで形にならなかった。
***
迎えの馬車を待っていると、ふわりと良い香りが漂って来て、コトネは思わず辺りを見回してしまう。
どうやら少し先の大衆居酒屋から来ているらしい。
大きな看板の下には屋台が出ていて、そこで買って好きな席で食事ができるようだ。
仕事帰りなのだろう、荷物を肩から下げた人たちが、もくもくと煙を上げる鉄板の前に並んでいる。
皆楽しそうに談笑していて、待ちながら麦酒を飲み、順番が来れば手渡された串料理をうまそうに頬張る。
その様子や、立ち上る香り、音に食欲と興味をそそられたのだろう、
「ねえ、フェリカ。あれはなに?」
尋ねるコトネの腹が小さくなるのを聞き、くすくす笑いながらフェリカが答える。
「たくさん歩いたもの、おなかがすくわよね。あれはスパイスに漬け込んだ肉を、香味野菜で挟んで焼いた料理よ。とてもおいしいの」
「……食べてみたいな」
「そうよね、あんなに良い香りがするんだもの、食べたくなるわ。でも……今日は食事係が準備してくれているから」
そっか、とほんの少し未練を残しつつ頷くコトネに、フェリカが続ける。
「今日は、たっぷりの野菜と豆をスパイスで煮込んだスープに、ひき肉やトマトのソースを小麦の生地で包んだ焼き物、それから──」
ひとつひとつ丁寧に説明され、そんなに!? と目を丸くするコトネ。
「そうそう、デザートはベリーをあしらったチーズのケーキだったわね。食後の紅茶と一緒にいただきましょう?」
「……そんなの聞いたら、楽しみでますますおなかがすいちゃうよ」
「ふふ、食事係が喜ぶわ」




