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黙り込んでしまったコトネを、フェリカがそっと覗き込む。
「……サヴジが、心配?」
問われ、コトネは小さく頷いた。
「ルーシアの冬が長いことは、前から知ってる。厳しいことも。でも……」
お渡りで、サヴジがどう国事に当たっているかを知った。
どれほど真剣に向き合い、対処しているのかを目の当たりにした。
だからこそ、長く厳しい冬をどう乗り越えているのか。
それから──これまで、どうしてきたのか。
一度考えだすと、ひどく気になってしまう。
「きっとすごく大変……だよね」
「そうね。雪崩や湖の凍結、暖炉での事故、凍傷や流行病。毎年冬備えはとても大変だと聞いているわ。薬草や保存食の貯蔵に失敗をすれば大惨事にもなりかねないし、神経をすり減らす部分でしょうね」
「……うん」
「次の王になる立場ということもあるし──」
以前、何事も先回りをして進めようとするサヴジに、エリンが不満を漏らしたことがある。
正直なところを言えば、コトネもエリンに同意だった。
婚姻の儀についても、考えをまとめさせようとする姿勢に、戸惑ったことさえある。
だが、そのときサヴジが言ったのは、
『冬のルーシアでは、 “明日取りに行けばいい” が命取りになる』
だった。
(確かに、そうだ。明日にしよう、じゃ間に合わないこともある)
今回のお渡りでも、明日やろうと思っていたことが、突然の帰還の知らせでできなくなったこともあった。
(でも──)
エリンも、次の王になる立場だ。
ただ、サンティエの空気は、ルーシアのそれとは大きく違う。
エリンがサヴジに不満を漏らしたのは、恐らくサヴジがひとりで抱え込むところにもあったのではないだろうか。
(……きっと、そうだ)
先回りをして進めることではない。
サヴジひとりが、先を見て、計画を立て、実行に持っていく。
そこが、サンティエから──エリンからすれば、気になるし放っておけない部分だったのだと思う。
急がなければいけないのなら、一緒にやれば良い。
間に合わないのなら、力を合わせれば良い。
大変なら、話して分かち合えば良い。
(──それが、サンティエ、なんだよね)
そこで、ふと、気になる。
「……フェリカは、前、自分は王にならないって言ってたよね?」
「ええ、言ったわ」
「お姉さんが、今、王だから……だよね?」
「そうよ。民からもとても慕われているし、優秀な姉なの」
ゆっくりと、フェリカの視線がイエリの街並みを辿る。
夕日に照らされオレンジがかった風景。
工房から上がる煙。
夜間灯の鈍い銀色の光。
仕事帰りに一杯やっていくのだろうか、楽しそうに会話をしている人々。
「姉の政策が、この国の人々を幸せにしているし、日々の暮らしを守っているのよ」




