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窯焼きを終えた銀細工を丁寧に磨いていく内に、それらしい輝きが目に見えて感じられるようになってきた。
最初はあんなにも柔らかく頼りなげだったものが、しっかりと固く、輝く。
そんな変化が面白く、ついつい磨く指先にも力が入る。
「すごい、こんなにきれいになるんだね」
「ええ、そうね。こうして磨いていく作業も、私はとても好きなの」
粘土をこねるのと違い、磨く作業では特に大きく形などが変わるわけではない。
確かに美しい輝きは増していくが、それなりの労力もいる。
だからだろうか。
なぜそこまで惹かれるのか分からず、コトネは小さく首をかしげる。
「つい、夢中になってしまうでしょう? 手の中の世界に集中してしまうの」
「それは、わかる、けど」
確かに、楽しくないわけではない。どんどんきれいになるのはうれしい。
ただ、『とても好き』というほどの魅力がどこにあるのか想像ができず、コトネの手が止まってしまう。
「無心になって、磨いて……そうして、気が付けば手の中にとてもきれいなものが出来上がるわ。頭の中もなんだかすっきりするし、出来上がったものは毎日に彩を添えてくれるでしょう?」
形を作るのも、もちろん好きだけど。
そう付け足して、フェリカは手元にふうっと軽く息を吹きかけ、側に置いた布でさらに磨く。
「……なんとなく、わかるような気も、する」
うん、……うん? うん、と考えながらも頷くコトネ。
その手の中の三日月も、最初と比べるとさらに白い光が増した。どうやら、こちらも完成で良さそうだ。
「それじゃ──これで、完成!」
見て、と白く輝く三日月を差し出す。
それを見てフェリカは目を細めると、親指と人差し指でそうっとつまみ、角度を変えながらしげしげと眺める。
「とても素敵だわ。大切にするわね、ありがとう」
側の皮紐を手に持つと、するするとこめかみのあたりから髪を取り、ねじり、束ねた。
その様子をじっと見ていたが、
「──あ」
思わず立ち上がるコトネ。
「どうしたの?」
「それ、……引っ掛けるところがない」
強く引き絞った弓のような形のそれは、いわゆる「返し」と呼ばれる部分がない。
簪のように髪を巻き留めることはできるかもしれないが、それにはやや不安定だし、短いだろう。
「心配いらないわ、ほら」
器用に髪を編み、皮紐と絡め、三日月に絡める。
髪の間から見え隠れする銀色は、まるで雲をまとう月のようだ。
「こういうのも良さそうね」
くるりと向きを変え、両端の髪で髪飾りを軽く結わえてみせる。
「馬蹄と上弦の月を重ねれば、幸運がやってきそうじゃない?」
「すごい、そんな風に留められるんだ」
「ええ、そうよ。ほら、ちゃんとコトネの三日月を捕まえたでしょう?」




