表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/60

5

***


 窯焼きを終えた銀細工を丁寧に磨いていく内に、それらしい輝きが目に見えて感じられるようになってきた。

 最初はあんなにも柔らかく頼りなげだったものが、しっかりと固く、輝く。

 そんな変化が面白く、ついつい磨く指先にも力が入る。


「すごい、こんなにきれいになるんだね」

「ええ、そうね。こうして磨いていく作業も、私はとても好きなの」


 粘土をこねるのと違い、磨く作業では特に大きく形などが変わるわけではない。

 確かに美しい輝きは増していくが、それなりの労力もいる。


 だからだろうか。

 なぜそこまで惹かれるのか分からず、コトネは小さく首をかしげる。


「つい、夢中になってしまうでしょう? 手の中の世界に集中してしまうの」

「それは、わかる、けど」


 確かに、楽しくないわけではない。どんどんきれいになるのはうれしい。

 ただ、『とても好き』というほどの魅力がどこにあるのか想像ができず、コトネの手が止まってしまう。


「無心になって、磨いて……そうして、気が付けば手の中にとてもきれいなものが出来上がるわ。頭の中もなんだかすっきりするし、出来上がったものは毎日に彩を添えてくれるでしょう?」


 形を作るのも、もちろん好きだけど。

 そう付け足して、フェリカは手元にふうっと軽く息を吹きかけ、側に置いた布でさらに磨く。


「……なんとなく、わかるような気も、する」


 うん、……うん? うん、と考えながらも頷くコトネ。

 その手の中の三日月も、最初と比べるとさらに白い光が増した。どうやら、こちらも完成で良さそうだ。


「それじゃ──これで、完成!」


 見て、と白く輝く三日月を差し出す。

 それを見てフェリカは目を細めると、親指と人差し指でそうっとつまみ、角度を変えながらしげしげと眺める。


「とても素敵だわ。大切にするわね、ありがとう」


 側の皮紐を手に持つと、するするとこめかみのあたりから髪を取り、ねじり、束ねた。

 その様子をじっと見ていたが、

 

「──あ」


 思わず立ち上がるコトネ。

 

「どうしたの?」

「それ、……引っ掛けるところがない」


 強く引き絞った弓のような形のそれは、いわゆる「返し」と呼ばれる部分がない。

 簪のように髪を巻き留めることはできるかもしれないが、それにはやや不安定だし、短いだろう。


「心配いらないわ、ほら」


 器用に髪を編み、皮紐と絡め、三日月に絡める。

 髪の間から見え隠れする銀色は、まるで雲をまとう月のようだ。

 

「こういうのも良さそうね」


 くるりと向きを変え、両端の髪で髪飾りを軽く結わえてみせる。


「馬蹄と上弦の月を重ねれば、幸運がやってきそうじゃない?」

「すごい、そんな風に留められるんだ」

「ええ、そうよ。ほら、ちゃんとコトネの三日月を捕まえたでしょう?」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ