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「それで、外を見たら、月がきれいだったんだ。それを思い出したから」
「ふふ、ありがとう」
うれしそうに微笑むフェリカを見て、コトネはほうっと息を吐く。
「──誰かに何かを作るのって、緊張したり、不安になったり、うれしくなったり、大忙しだ」
「緊張したり、不安になったり、うれしくなったりしたの?」
さらりと問われ、コトネは一瞬言葉に詰まる。
「……うん」
──が、フェリカの視線が自分から動かないのを見て、唇がわずかに動く。
何か言おうとして、僅かに考えて、また息を吐くと、
「……上手にできるかな、喜んでくれるかな、って考えた。でも、喜んでもらえて、うれしくなった」
「そうね。作っている間、そんなにも相手のことを考えてくれたのなら、もらった側もうれしさが増すのだと思うわ」
その言葉に、ふとサヴジからもらったバームを思い出す。
そして、エリンがよく作ってくれた、果実水を。
ふたりも、自分のことを考え、作ってくれたのだろう。
今の自分と同じように、緊張したり、不安になったり、気持ちが忙しくなったりしたのだろうか。
そんなことを考えていると、自然と言葉が途切れた。
「どうしたの?」
「……サヴジから、『必要なら使え』ってバームをもらったんだ」
「ああ、前にサンティエでコトネはひどく日焼けをしたことがあったものね」
「うん。それから、エリンからは果実水をたくさん作ってもらった」
「果実水は肌のためにも良いと聞くわ。そのふたつがあったから、きっと楽しく過ごせたんじゃないかしら」
コトネは小さく頷いた。
それから、ふと思い出したように、
「あのオルゴールは、フェリカが作ってくれたの?」
少しだけ間を置いて、フェリカは頷く。
「どうして?」
「コトネが眠れない夜を過ごしている気がしたの。だから、少しでも落ち着けるものをと思って」
「うん……すごく、落ち着いた。ありがとう」
「役に立ったのなら良かったわ」
さあ、それじゃ焼いて仕上げましょう、と窯の方を視線で促す。
うん、と頷き立ち上がるコトネ。
もう一度、手元の月をかたどった髪飾りに視線を落とす。
「もっと、フェリカのことを考えて、作ったら良かったかな」
首をかしげるフェリカに、
「せっかく作っても、自分じゃ見られない。だからフェリカにつけてほしいと思って作ったけど……フェリカはきっと他にも髪飾りを持ってるよね?」
「ええ、あるわ」
「それなら──」
「でも、コトネが見たいと思って、初めて作ってくれたのでしょう? それをつける役を私にくれたんだもの、とてもうれしいわ」
「……本当?」
もちろんよ、とフェリカが笑顔で頷くのを見て、ほんの少し肩の力がゆるむ。
「自分で言うのもなんだけど、きっと似合うと思うの」
さらりとそう言われて、ようやくコトネも小さく笑った。
「うん、似合うと思う。フェリカがつけてくれるの、楽しみにしてる」
「私もよ。ありがとう、コトネ」
「ううん。……いつか、サヴジやエリンにも、何か作ってあげたいな」




