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「こう──かな?」
初めて触れる銀粘土は、ひんやりと不思議な感触で面白い。
丁寧に伸ばし、両端を細く整えていこうとしたところで、フェリカがふと手元を覗き込んだ。
「とても上手よ。でも銀粘土は乾燥しやすいの。だからここ、少し水を足すといいわ」
「本当だ、少しひび割れそうになってる。……作り直さなくても大丈夫?」
「ええ。指先を──そう、ちょん、と水につけて」
言われた通り水入れに指をつけ、銀粘土をそうっとなぞる。
繰り返している内に、わずかに見えたひび割れは修復され、滑らかになってきた。
再び両端を細く伸ばす作業に没頭するコトネ。
乗合馬車の巡回時間なのだろう、外からはまた、蹄の音と車輪の音がする。
真剣な目をして取り組むコトネを微笑ましく見守ると、フェリカも器用に銀粘土を伸ばし始めた。
***
「できた」
ふう、と顔を上げる──が、フェリカの姿が見当たらない。
きょろ、と周囲を見渡すと、
「ごめんなさい、窯の様子を見てきたの。完成した?」
奥から戻って来るのを見て、コトネの口角が上がる。
「うん、できた。これなんだけど──」
出来上がったばかりのそれは、強く引き絞った弓のようだ。
ただ、先端が細く、真ん中に進むにつれて幅が広くなっている。
フェリカは少し考えるようにそれを見つめ、
「馬蹄かしら?」
「ううん、違う。……月、なんだ」
やっぱり、あまり上手には作れなかったかも、とそれを見下ろすコトネに、首を振る。
「そんなことないわ。イエリでは馬車が多いでしょう? その分、馬蹄型に馴染みが深いの。だから最初に馬蹄かしらと思ったのよ」
「そうなの?」
「ええ。それに馬蹄は幸運のモチーフでもあるの。コトネが私のために作ってくれたものが、幸運を運んでくれるという暗示みたいで素敵じゃない?」
にっこりと笑うフェリカ。
そうかも、とコトネの表情も明るくなってくる。
「じゃあ、今度は私に聞かせて。コトネはどうして月の髪飾りを作ってくれたの?」
「……あの、オルゴールの曲。『眠れない夜に』って」
コトネなりに、今回のお渡りに入ってから、少しずつではあるが婚姻の儀について考えることが増えた。
ルーシアではサヴジのことをもっと知ろうとしたし、もしサヴジを選んだらどうなるかということも、意識したと思う。
サンティエでも、エリンやサンティエでの暮らしについて知ることができた。
ただ、情報量が増えた分、迷いの深度も深まった気がする。
そんなとき、あのオルゴールを奏でた。
静かな音色が流れるたび、胸の奥のざわめきが少しだけ遠のいていく気がして、落ち着くことができた。
──そんな話をするコトネを、フェリカはただ黙って聞き、頷きながら見つめる。




