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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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3

「こう──かな?」


 初めて触れる銀粘土は、ひんやりと不思議な感触で面白い。

 丁寧に伸ばし、両端を細く整えていこうとしたところで、フェリカがふと手元を覗き込んだ。


「とても上手よ。でも銀粘土は乾燥しやすいの。だからここ、少し水を足すといいわ」

「本当だ、少しひび割れそうになってる。……作り直さなくても大丈夫?」

「ええ。指先を──そう、ちょん、と水につけて」


 言われた通り水入れに指をつけ、銀粘土をそうっとなぞる。

 繰り返している内に、わずかに見えたひび割れは修復され、滑らかになってきた。

 再び両端を細く伸ばす作業に没頭するコトネ。

 

 乗合馬車の巡回時間なのだろう、外からはまた、蹄の音と車輪の音がする。

 真剣な目をして取り組むコトネを微笑ましく見守ると、フェリカも器用に銀粘土を伸ばし始めた。


 ***


「できた」


 ふう、と顔を上げる──が、フェリカの姿が見当たらない。

 きょろ、と周囲を見渡すと、


「ごめんなさい、窯の様子を見てきたの。完成した?」


 奥から戻って来るのを見て、コトネの口角が上がる。

 

「うん、できた。これなんだけど──」


 出来上がったばかりのそれは、強く引き絞った弓のようだ。

 ただ、先端が細く、真ん中に進むにつれて幅が広くなっている。

 フェリカは少し考えるようにそれを見つめ、


「馬蹄かしら?」

「ううん、違う。……月、なんだ」


 やっぱり、あまり上手には作れなかったかも、とそれを見下ろすコトネに、首を振る。


「そんなことないわ。イエリでは馬車が多いでしょう? その分、馬蹄型に馴染みが深いの。だから最初に馬蹄かしらと思ったのよ」

「そうなの?」

「ええ。それに馬蹄は幸運のモチーフでもあるの。コトネが私のために作ってくれたものが、幸運を運んでくれるという暗示みたいで素敵じゃない?」


 にっこりと笑うフェリカ。

 そうかも、とコトネの表情も明るくなってくる。


「じゃあ、今度は私に聞かせて。コトネはどうして月の髪飾りを作ってくれたの?」

「……あの、オルゴールの曲。『眠れない夜に』って」


 コトネなりに、今回のお渡りに入ってから、少しずつではあるが婚姻の儀について考えることが増えた。

 ルーシアではサヴジのことをもっと知ろうとしたし、もしサヴジを選んだらどうなるかということも、意識したと思う。

 サンティエでも、エリンやサンティエでの暮らしについて知ることができた。


 ただ、情報量が増えた分、迷いの深度も深まった気がする。


 そんなとき、あのオルゴールを奏でた。

 静かな音色が流れるたび、胸の奥のざわめきが少しだけ遠のいていく気がして、落ち着くことができた。


 ──そんな話をするコトネを、フェリカはただ黙って聞き、頷きながら見つめる。


 

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