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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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 路面のすべてがレンガで舗装されているイエリでは、乗合馬車も多く走っている。

 カツ、カツ、と蹄鉄の音と、車輪が規則的に回る音を聞きながら、コトネとフェリカはのんびりと歩道を歩く。


「それで──サンティエではお着替え会をしたんですって?」


 ルーシアで熱を出したことがフェリカとエリンに伝わったように、お渡りでのことは各国にも詳細が届く。

 

「うん、そうなんだ」

「以前エリンが演者として参加したいと言っていた、アレよね?」

「うん」

「……ということは、エリンは諦めていないということね」


 うーん、と首をかしげるフェリカを見て、思わずコトネは笑ってしまう。

 実際にエリンは、『そうよ、だから次の歌劇祭なの。それならサヴジにも時間はあるし、フェリカだって練習できるわ』と笑っていたのだ。

 

「歌は苦手なのよね……」

「それも、『それにどうしても歌が苦手なら、かわりにエリンが歌うもの』って言ってたよ」

「……仕方ないわね」


 その途端、吹き出すコトネを見て、フェリカが首をかしげる。


「どうしたの?」

「絶対、フェリカはそう言うと思ったんだ。『仕方ないわね』って。それで、サヴジは反論するけど結局押されちゃうんだろうなって、さ」


 楽しそうに言うコトネの言葉に、想像ができたのだろう。

 つられてフェリカも笑いながら頷く。

 

「そうね、きっとそうなると思うわ」

「だから、次の歌劇祭では──」


 言いかけて、停まる。

 次の歌劇祭の頃には、コトネの性別も決まっているのだ。


 三人の内の誰かと契りを交わし、その国に移り、そこでどんな生活をしているのだろうか。

 

 黙り込んでしまったコトネに、


「……それで、お着替えをした感じは、どうだったの?」


 フェリカが優しく続きを促す。

 あ、と顔を上げ、小さく呼吸をすると、


「うん、王子の衣装を着たとき、エリンは似合うって言ってくれたよ。サヴジの衣装も、フェリカの衣装も、エリンの衣装も着てみたんだ」

「確か、私の役は司祭様、なのよね」

「うん。すごくきれいな布でできていて、つい見惚れちゃった。フェリカにぴったりだって思った」


 ただ、自分にはあまり似合わなかった。

 サイズが合わなかったこともあるけれど、衣装に着られているような気がしてしまった。

 そう付け足す。

 

「サヴジが、草原の王でしょう?」

「そうなんだ、重厚で格好いい衣装だったよ。サヴジにすごく似合うだろうな」


 ただ、自分には重くて、大きかった。

 王子の衣装の方が、王の衣装よりはしっくりきたかもしれない。

 コトネの言葉に、フェリカは何度か頷く。


「そしてエリンが、トケイソウの乙女ね」

「可愛くてきれいな衣装だった。衣装のイメージも、エリンにすごく合う」


 ただ、自分には少し違和感があった。

 素敵な衣装だけど、普段肌を出さないからかな、なんだか落ち着かなかった。

 コトネの言葉に、フェリカは小さく目を細める。

 

 石畳を打つ蹄鉄の音が、規則正しく二人の間を通り過ぎていった。

 

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