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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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 ***

 

 草原の王の衣装は、王子のものよりも、司祭のものよりも布自体にハリがある。

 何より、服自体がずっしりと重く、装飾品をつけるとなおさらだ。


「素敵! でも、やっぱり少し大きいわね」


 サヴジのサイズで作ってあるというだけあって、肩幅も、丈も、すべてが大きい。


 ──「コトネ、動くな」

 そう、低く、鋭い声とともに手を引かれ、サヴジの背後に置かれた瞬間を思い出す。

 遠乗りをしたときも、汗をかき、へばってしまった自分に対し、サヴジは大分余裕があった。


(体が定まっていないからだって言ってたけれど……)


「次は、エリンのを着てもいい?」


 ***


 トケイソウの乙女の衣装は、他のどれよりも軽い。

 ひらひらとした布から、手足が覗く。動きやすくはあるが、少し落ち着かない。


「かわいいわ、でも少し落ち着かない?」

「う、うん。普段肌を出すことがあんまりないからかな」

「そうね。でもエリン、コトネの普段の格好も好きよ」

「……着てみる?」

「いいの!? じゃあ、今のエリンのと交換しましょ!」


 一瞬驚いた後、うれしそうに顔を輝かせるエリン。

 うん、と頷くと再びコトネは小部屋へと戻った。


 ***


「どうかしら?」


 見慣れない姿だからこそ違和感はあるものの、コトネの装束を着たエリンは、不思議と様になっていた。

 ただ、エリンとコトネでは、髪の色も瞳の色も違う。

 そのせいか、少しだけ浮いてしまうように感じられた。


「うん、エリンにもよく似合うよ。でも、エリンならもう少し明るい色の方が映えると思う」

「そうね、エリンもそう思う」


 そして、エリンの衣装を着たコトネも、悪くはないが、やはり同様だ。


「コトネもいいと思うわ。でも、このドレスよりもう少し濃いものの方が素敵ね」

「うん。これはエリンが着た方が似合う」


 お互いの姿を見比べながら装飾品を合わせてみるものの、どこかしっくりこない。

 結局すぐに、再び順番に小部屋へと戻り、元の姿に戻ることになった。


 ***


「お着替え会、楽しかったわね」


 着替え終わった頃には、すっかり日が沈んでいた。

 窓から入って来る心地良い風を感じながら、果実水に口をつけ、ひと息つく。


「どの衣装も素敵だったけれど、エリンはコトネ王子が一番素敵だと思ったわ」

「ありがとう。私は、エリンの司祭も似合いそうだと思った」

「司祭の衣装も素敵よね! エリン、それもやってみたかったの」


 そうなの? と驚くコトネに、エリンは頷きながらするりとスカートの裾をまくって見せる。

 

「そうよ。でもトケイソウの乙女の衣装は、手足が出るでしょう? きっとフェリカは嫌がるわ」


 ああ、と思わず納得をしてしまう。

 コトネ自身も、先程試着をしてみたとき、手足が出ることに落ち着かなさを感じたものだ。

 

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