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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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3



「腰にはこの剣よ、それから肩布はこれ」


 手際よくエリンがコトネに剣を携えさせ、ふわりと肩布を添える。

 

 落ち着かないような、楽しみなような──

 自分でもよくわからない感覚に、コトネはただ、おとなしく身を任せる。


「これでいいわ」

 

 一通り装飾品が整ったらしい。

 エリンはコトネの手を引き、部屋の中央。大きな姿見の前へと連れて行く。


「ほら見て、コトネ王子!」

「あ……」


 そこに映っていたのが、一瞬、誰かわからなかった。

 

「ね! 素敵でしょう!」


 見慣れているはずの自分のはずなのに、どこか違う姿だった。

 落ち着いた色合いの衣装と、数々の装飾品が、見慣れた輪郭を変えている。

 それは確かに、“王子”と呼ばれてもおかしくない姿だった。

 

 目を瞬かせるコトネに腕を絡ませ、エリンが嬉しそうに微笑む。


「思った通りだわ、すっごく素敵! 絶対、絶対似合うって思ってたの」


 エリンと並んだ自分の姿は、確かに”王子”だ。

 サヴジ程のたくましさや力強さ、堂々たる風格はない──が、それでもエリンの隣に立つと、不思議と”王子”に見えた。


「……コトネ? どうかした? どこか苦しい?」


 じっと鏡を見ているコトネを、エリンがのぞき込む。


「あ、──ううん、サイズはちょうどいいよ」

「それなら良かったわ。着心地はどう?」

「うん、……思っていたより布が柔らかくて、いいね」


 確かに、着心地はいい。

 サイズもあっているし、どこも苦しいところなどない。

 胸に残るこの妙な感覚は、きっと着なれない衣装のせいなのだろう。


(それなら、他の衣装も着てみたら、……)

 

「エリン」

「なあに?」

「他の衣装も、着てみてもいいかな?」

「いいわ。皆のサイズで作ってあるから、少しきつかったりゆるかったりするかもしれないけどね」


 身長が近いのはフェリカだ。

 けれど、身体つきが似ているのはエリン。

 肩幅も背も大きいのは、サヴジ。


 確かに、今の自分には、サイズが合わないものもあるだろう。

 

「どれからがいい?」

「じゃあ──」


 どれから試すのがいいかと考えながら、再び先程紹介された衣装に目を向ける。


「フェリカの衣装がいいな」


 ***


 司祭の衣装は、王子のそれよりもずっと繊細で、柔らかい。

 幾重にも重ねられた布は、コトネの輪郭を丁寧に隠し、司祭としての役を与えてくれるようだ。


「いいと思うわ。でも、エリンは王子の方が好き」


 胸元はゆるく、腰回りは少しきつい。

 似合っていないわけではないが、服に着られているような気がしてしまう。


「じゃあ、次は──サヴジの衣装を着てみたい」




 

 


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