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「腰にはこの剣よ、それから肩布はこれ」
手際よくエリンがコトネに剣を携えさせ、ふわりと肩布を添える。
落ち着かないような、楽しみなような──
自分でもよくわからない感覚に、コトネはただ、おとなしく身を任せる。
「これでいいわ」
一通り装飾品が整ったらしい。
エリンはコトネの手を引き、部屋の中央。大きな姿見の前へと連れて行く。
「ほら見て、コトネ王子!」
「あ……」
そこに映っていたのが、一瞬、誰かわからなかった。
「ね! 素敵でしょう!」
見慣れているはずの自分のはずなのに、どこか違う姿だった。
落ち着いた色合いの衣装と、数々の装飾品が、見慣れた輪郭を変えている。
それは確かに、“王子”と呼ばれてもおかしくない姿だった。
目を瞬かせるコトネに腕を絡ませ、エリンが嬉しそうに微笑む。
「思った通りだわ、すっごく素敵! 絶対、絶対似合うって思ってたの」
エリンと並んだ自分の姿は、確かに”王子”だ。
サヴジ程のたくましさや力強さ、堂々たる風格はない──が、それでもエリンの隣に立つと、不思議と”王子”に見えた。
「……コトネ? どうかした? どこか苦しい?」
じっと鏡を見ているコトネを、エリンがのぞき込む。
「あ、──ううん、サイズはちょうどいいよ」
「それなら良かったわ。着心地はどう?」
「うん、……思っていたより布が柔らかくて、いいね」
確かに、着心地はいい。
サイズもあっているし、どこも苦しいところなどない。
胸に残るこの妙な感覚は、きっと着なれない衣装のせいなのだろう。
(それなら、他の衣装も着てみたら、……)
「エリン」
「なあに?」
「他の衣装も、着てみてもいいかな?」
「いいわ。皆のサイズで作ってあるから、少しきつかったりゆるかったりするかもしれないけどね」
身長が近いのはフェリカだ。
けれど、身体つきが似ているのはエリン。
肩幅も背も大きいのは、サヴジ。
確かに、今の自分には、サイズが合わないものもあるだろう。
「どれからがいい?」
「じゃあ──」
どれから試すのがいいかと考えながら、再び先程紹介された衣装に目を向ける。
「フェリカの衣装がいいな」
***
司祭の衣装は、王子のそれよりもずっと繊細で、柔らかい。
幾重にも重ねられた布は、コトネの輪郭を丁寧に隠し、司祭としての役を与えてくれるようだ。
「いいと思うわ。でも、エリンは王子の方が好き」
胸元はゆるく、腰回りは少しきつい。
似合っていないわけではないが、服に着られているような気がしてしまう。
「じゃあ、次は──サヴジの衣装を着てみたい」




