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その数日後。
コトネはエリンと一緒に城下町の外れを歩いていた。
王宮を出て、ゆるやかな道を進む。
舗装された道には、ところどころ花壇が設けられ、色とりどりの花が美しい。
ひらひらと舞う蝶が珍しく、ついコトネは目で追ってしまう。
「今日はどこに行くの?」
「西の湖よ。とってもきれいなところなの」
エリンが背負っているのは、敷き布を丸めたものだ。
コトネが持っているバスケットには、昼食にと用意されたサンドイッチが入っていて、中身は『着いてからのお楽しみ』だという。左手に感じるその心地よい重みが、なんだかうれしい。つい歩きながらも、そちらにばかり意識が向いてしまう。
「そうなんだ、楽しみ」
「もうしばらくすると、たくさん渡り鳥が来るのよ。それもコトネに見せたいわ」
以前サンティエでの交流会のときは、四人で歩いた。
今は、エリンと二人。
鳥の声に顔を上げると、雲は高く、空は抜けるように青い。
風が、頬をなでていく。
こうして誰かと並んで歩くことに、もう違和感はなかった。
──と、エリンが足を止める。
「どうしたの?」
「ヤギよ、ほら」
指差す方を見ると、子ヤギが道端で花壇の花を食んでいる。
きょろきょろとエリンが辺りを見回すが、どうやら他にはいないようだ。
「コトネ、行こう」
エリンは迷いなく子ヤギの方へ歩いていく。
コトネも後に続いた。
***
「こんなに近くでヤギを見るのは、初めて。かわいいね」
「かわいいでしょ、エリンもヤギ好きなの。でも──」
すぐそばまで近付くと、子ヤギは顔を上げ、こちらを見た。
けれど逃げる様子はなく、ほんの少し首を傾げると、また花に口を寄せる。
「……迷っちゃったのね」
エリンはそう言って、しゃがみ込む。
そっと背に手を伸ばすと、子ヤギはおとなしくそれを受け入れた。
「この子、首輪がないわ。どこから来たのかしら」
エリンにならって背中を優しくなでると、ふわりと温かさが伝わってきた。
「うーん……ティティ? ルル?」
エリンはヤギを撫でながら、いくつか名前を口にする。
「メイ? ミモ?」
「……あ」
その途端、子ヤギの耳がぴくりと動いた。
「この子、“ミモ”だわ!」
「ミモ?」
ぱたぱた、と子ヤギの耳が動く。
「やっぱり!」
「なんでわかったの?」
「このあたりで“ミモ”って呼ばれてる子、前に見たことがあるの」
そう言うと、すっと立ち上がって、辺りを見回す。
花壇の終わりに、シロツメクサの群生があるのを見つけると、
「このままだと、またどこか行っちゃうものね」
またしゃがみ込み、足元の白い花と、その周囲の細く長い草を摘み始めた。
花を何本か束ねて持ち、細長い草をくるりと巻き絡める。
同じようにまた巻き絡め、どんどん下へ、下へと繰り返す。
合間にまた花を挟み、草を巻き絡めることを繰り返す内に、束ねられた部分が長く伸びて一本のロープになっていく。
「……」
コトネも、そっと同じように草を摘み、束ねて持つ。
見よう見まねでねじってみる──けれど、うまくまとまらない。
「あら」
エリンが手を止めて、こちらを見る。
「ここ、こう」
「こう?」
「そうそう」
指が重なる。
もう一度やってみると、さっきよりもしっかりと形になった。
(……できた)
草を摘む。
絡める。
また摘む。
──そうしているうちに、気づけば二本ともそれなりの長さになっていた。
「すっごくいいわ!」
にっこりと笑うと、エリンは二本を器用に一本につなげた。
そうして出来上がった花飾りのついたロープを、子ヤギの首にゆるく結ぶ。
「行きましょう、ミモ」
軽く引くと、子ヤギは素直についてくる。




