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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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6

 

 その数日後。

 コトネはエリンと一緒に城下町の外れを歩いていた。


 王宮を出て、ゆるやかな道を進む。

 舗装された道には、ところどころ花壇が設けられ、色とりどりの花が美しい。

 ひらひらと舞う蝶が珍しく、ついコトネは目で追ってしまう。

 

「今日はどこに行くの?」

「西の湖よ。とってもきれいなところなの」


 エリンが背負っているのは、敷き布を丸めたものだ。

 コトネが持っているバスケットには、昼食にと用意されたサンドイッチが入っていて、中身は『着いてからのお楽しみ』だという。左手に感じるその心地よい重みが、なんだかうれしい。つい歩きながらも、そちらにばかり意識が向いてしまう。


「そうなんだ、楽しみ」

「もうしばらくすると、たくさん渡り鳥が来るのよ。それもコトネに見せたいわ」


 以前サンティエでの交流会のときは、四人で歩いた。

 今は、エリンと二人。


 鳥の声に顔を上げると、雲は高く、空は抜けるように青い。

 風が、頬をなでていく。

 こうして誰かと並んで歩くことに、もう違和感はなかった。


 ──と、エリンが足を止める。


「どうしたの?」

「ヤギよ、ほら」


 指差す方を見ると、子ヤギが道端で花壇の花を食んでいる。

 きょろきょろとエリンが辺りを見回すが、どうやら他にはいないようだ。


「コトネ、行こう」


 エリンは迷いなく子ヤギの方へ歩いていく。

 コトネも後に続いた。



 ***


 

「こんなに近くでヤギを見るのは、初めて。かわいいね」

「かわいいでしょ、エリンもヤギ好きなの。でも──」

 

 すぐそばまで近付くと、子ヤギは顔を上げ、こちらを見た。

 けれど逃げる様子はなく、ほんの少し首を傾げると、また花に口を寄せる。


「……迷っちゃったのね」


 エリンはそう言って、しゃがみ込む。

 そっと背に手を伸ばすと、子ヤギはおとなしくそれを受け入れた。

 

「この子、首輪がないわ。どこから来たのかしら」


 エリンにならって背中を優しくなでると、ふわりと温かさが伝わってきた。

 

「うーん……ティティ? ルル?」


 エリンはヤギを撫でながら、いくつか名前を口にする。


「メイ? ミモ?」

「……あ」


 その途端、子ヤギの耳がぴくりと動いた。


「この子、“ミモ”だわ!」

「ミモ?」


 ぱたぱた、と子ヤギの耳が動く。


「やっぱり!」

「なんでわかったの?」

「このあたりで“ミモ”って呼ばれてる子、前に見たことがあるの」


 そう言うと、すっと立ち上がって、辺りを見回す。

 花壇の終わりに、シロツメクサの群生があるのを見つけると、


「このままだと、またどこか行っちゃうものね」


 またしゃがみ込み、足元の白い花と、その周囲の細く長い草を摘み始めた。

 

 花を何本か束ねて持ち、細長い草をくるりと巻き絡める。

 同じようにまた巻き絡め、どんどん下へ、下へと繰り返す。

 合間にまた花を挟み、草を巻き絡めることを繰り返す内に、束ねられた部分が長く伸びて一本のロープになっていく。


「……」


 コトネも、そっと同じように草を摘み、束ねて持つ。

 見よう見まねでねじってみる──けれど、うまくまとまらない。


「あら」


 エリンが手を止めて、こちらを見る。


「ここ、こう」

「こう?」

「そうそう」


 指が重なる。

 もう一度やってみると、さっきよりもしっかりと形になった。

 

(……できた)


 草を摘む。

 絡める。

 また摘む。

 ──そうしているうちに、気づけば二本ともそれなりの長さになっていた。


「すっごくいいわ!」


 にっこりと笑うと、エリンは二本を器用に一本につなげた。

 そうして出来上がった花飾りのついたロープを、子ヤギの首にゆるく結ぶ。


「行きましょう、ミモ」


 軽く引くと、子ヤギは素直についてくる。

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