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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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「どうしたの? 急ぎの要件?」

「西の畑で、虫の被害が出たそうで……。対処はしているのですが、隣の区画にも広がるかもしれなくて」

「そうなのね。誰が見てくれてるの?」

「今はサージェが中心に」

「ああ、サージェなら大丈夫そうね。ちょっと待ってて」


 そういうとエリンはくるりと振り返り、誰かの名前を呼ぶ。

 呼ばれて顔を上げた人物に、これまでの流れを手短に伝え、帰りに寄って伝えてくれと、軽く手を振る。

 

「これで大丈夫よ、きっと明日にはリーヤが話を聞きに行くと思うわ」

「ありがとうございます!」

 

「……エリン、ごめん、今話が聞こえたんだけど──大臣がいないの?」

「そうなの。でも大丈夫よ、書類はもらったし、帰りに届けてもらうから」


 コトネが席に戻ってきたエリンにそう聞くと、こともなげに頷く。

 どうやら先程名を呼んだ人物は、大臣リーヤの家の隣に住んでいるらしい。

 要件をまとめた書類を渡して、明日にでも対処してもらうということだが──


「そう、なんだ。でも……それで、大丈夫なの?」


 思わずこぼれた言葉に、エリンはきょとんとした表情で首を傾げる。


「どうして?」

「だって、大臣なんでしょう?」


 コトネも、ヤコクではずっと離れに住んでいるため、それほど国の仕組みについて詳しい方ではない。

 それでも、上に立つ者がいて、方針を決め、動かしていく存在があることは知っている。

 ルーシアでも、そこは目にしたばかりだ。

 

「国のことを決める人が、いないままで……」


 口に出してみて、自分でもうまく言葉にできていないと気づく。

 そんなコトネを見て、エリンはふっと小さく笑う。


「大丈夫よ。だって、リーヤひとりで全部決めてるわけじゃないもの」

「……え?」

「さっきの話も、サージェが見てるんでしょう? だったら、まずはそれでいいの。気になることがあれば、こうして誰かが持ってくるし、皆で話せばいいだけ」


 さらりと言って、スプーンを手に取る。


「それにね、リーヤがいなくても困らないようにしてるのは、リーヤ自身なのよ」

「……そう、なの?」

「ええ。リーヤは大臣だけど、皆にもちゃんと仕事を振ってるわ」

「それは──そう、じゃない? だって、大臣なんでしょう?」

「皆に任せるかわりに、自分も皆の仕事を一緒にするの。手が回らなければ、できる人に声をかけるし、声をかけられない人がいれば、かわりに話すわ」

「あ……」

「ひとりで抱え込まないようにって、いつも言ってるもの」


 くすりと笑って、エリンは続ける。


「だから、ヤギの子が生まれたらそっちを見に行くのも、大事な仕事なの」


 まるで当然のことのように言われて、コトネは言葉を失う。


(それで、国が回るの……?)


 問いは胸に浮かぶのに、なぜか否定の言葉は出てこない。

 目の前では、皆が当たり前のように食事をし、話をし、笑っている。


 「こうして、皆で食事をするのも……」


 普通、なのだろうか。

 そう疑問が浮かぶが、こちらもうまく言葉にならない。

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