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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko


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 それから少し歩き、二人がたどり着いたのは、先程の夫婦のものだというイチゴ園だ。

 エリンに連れられるがまま、コトネも柵を越え、イチゴ畑の中に入る。ひょい、ひょい、と危うげない足取りでエリンは畝を乗り越え、しゃがみ込むとイチゴを摘んでぱくりと食べた。


「あまーい! ね、コトネ、その大きいの食べてみて」

「うん……でも、いいの?」

「うん」


 コトネの問いに笑顔で頷き、ひとつのかごを手渡すエリン。


「食べながら、おいしそう! って思うのを摘んで、これに入れてね」


 そう言いながら、ひとつ摘んで口に運び、またひとつ摘むと別のかごへと入れる。

 促されるまま恐る恐るイチゴに手を伸ばし、エリンがするようにして摘み取るコトネ。


 (本当に、いいのかな……?)


 エリンを見ると、何かあったのかと不思議そうに見つめ返された。


「コトネ、イチゴは嫌い?」

「ううん、好き」

「じゃあ食べてみて、すっごく甘いから」


 にっこりと笑顔を向け、またひとつ摘んで口に運ぶエリン。

 おずおずと摘んだイチゴを口元へ運ぶと、それだけでふわりと甘い香りが漂う。

 少し歩いてきた分、喉も乾いた。何より、先ほどからエリンが美味しそうに食べる様子を見ているのだ。ついつい、こくり、と喉が鳴る。


「いただき、ます」


 ぱく、と小粒のそれを一口に食べた瞬間、


(甘い……!)


「ね、甘いでしょ!」


 驚いて目を見開くコトネを見て、エリンが嬉しそうに笑う。

 

「デュカはね、ここの他にもサンティエ中でイチゴを育ててるのよ」

「こんなに甘いイチゴ、初めて食べた。すごくおいしいね」

「そうでしょう? デュカのイチゴだもの。こうして摘んだイチゴは、ジャムにしたり、果実酒にしたりするの。パンにつけて食べると、最高なのよ」


 そう言いながら、ひとつ、ふたつ、と慣れた手つきでイチゴを摘んではかごに入れていく。

 端まで行くと、また別の小篭を抱え、隣の列に並んでいる真っ黒いベリーを摘み始めた。


「そのベリーは、食べないの?」

「ふふっ、このベリーはそのまま食べたらすごくすごく酸っぱいの。顔がしわくちゃになっちゃうくらい」


 こんなふうにね、とぎゅうっと口をすぼめてみせるエリンに、つい笑ってしまう。


「……食べてみたい?」

「ちょっとだけ、興味がある……かも」

「じゃあ、ひとつだけ一緒に食べましょ」


 エリンの小さな手に乗せられた黒い果実をそうっとつまみ、


「せーのっ」


 エリンの合図で口に運び、そうっと歯を立てた──瞬間、思わずコトネは肩をすくめ口を押える。


「……っ、──すっ、ぱいっ……」

「ううっ、すっぱーい!」


 エリンもぎゅうっと口をすぼめ、目を閉じ頭を振る。

 なんとか飲み込み、酸味の衝撃が落ち着いて、ひと呼吸したところで、


「あはははっ、コトネったら、涙目になってる」

「エリンだって」


 顔を見合わせて、ふたり同時に笑いがこみ上げてきた。

 

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