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執務机に手をつきながら、サヴジは静かに息を吐く。
思い出すのは、夕食時のコトネの様子。
ルーシアに一人で滞在し、迎えた朝。
その日の朝食では、コトネはいつになく緊張しているように見えた。
その一方で、ともに薬草園に向かう途中の遠乗りでは、緊張も大分解けて楽しんでいたように思う。
園内を見て歩く際も、アクシデントこそあったものの、それまでは笑顔も多く見られた。
──だが、色々と無理をさせてしまったのかもしれない。
調査の結果、例のキノコの脅威は軽微なものだった。
それにもかかわらずコトネがあれほど寝込んだのには、精神的な負担も大きかったのだろう。
婚姻の儀まで、後11ヶ月。
急な通達にコトネは驚いていたし、戸惑ってもいた。
ただ、冬が近付けば、ルーシアでは急激に冷え込む日も増える。極端な気温差は、コトネの体に堪えるだろう。
また、もう間もなく冬越えの準備で慌ただしくなる。そうなれば、お渡り期間を満足なものにできない可能性も高い。
だからこそ、交流会直後にそのままルーシアでのお渡りを提案し、事を進めてきた。
(だが──)
『……北の国としても、看過できる話ではない』
『そっか、私は皇貴、……だもんね』
あのときの言い方が、適切だったかどうか。そればかり考えてしまう。
コトネは、笑っていた。
だが、そのときの目には、初めてコトネに会ったときに感じた空虚さが滲んでいたように見えた。それから、寂しさのようなものも。
皇貴であるコトネの健康状態は、ルーシア、サンティエ、イエリにも重要事項だ。
ましてや今は、婚姻の儀を11ヶ月後に控え、いつも以上に慎重になるべき時期だということもある。
(北の国としても看過できる話ではないのは確かだが、──……)
話をしに行くべきかと考えるが、おそらくコトネはもう休んでいるだろう。病み上がりに無理をさせたくはない。
何度目かのため息で、机上の書類がはらりと捲れた。手を伸ばし、おさえる。ルーシアの中でも特に大雪が降る地域の設備状況報告書に、予算計上書だ。こちらも早々に目を通し、指示を出さなくてはいけない。
(ならば、明日にでも改めて話をしよう)
ポプリは作りかけのまま終わってしまった。
それを仕上げながら話をすれば、きっともう少ししっかりと気持ちを擦り合わせることもできるだろう。
短く息を吐くと、サヴジはランプを近付け、書類に視線を落とした。
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